高齢化が進むなか、親の資産管理を巡る問題が家族の大きな課題となっています。近年はネット通販やポイント還元サービスの普及により、「節約のつもり」が思わぬ支出につながるケースもみられます。 久しぶりに帰省した息子が直面した出来事を通して、高齢期の消費行動と家計管理の難しさを見ていきます。
 「なんだ、これっ!」半年ぶりに帰った実家のテーブルに散乱する「督促状」。〈年金月12万円・75歳母〉の貯金通帳から消えた「1,000万円」、頭を抱える45歳息子 (※写真はイメージです/PIXTA)

親の老後資金が消えていた…半年ぶりの帰省で見た異変

親が貯めてきた老後資金は、本当に老後のために使われているのか―― そんな疑問を抱いたのは、都内で会社員として働く田中健一さん(45歳・仮名)です。

 

父を亡くしてから、実家では母の田中和子さん(75歳・仮名)が一人暮らしを続けています。父は堅実な性格で、退職金や預貯金を大切に管理していました。

 

「父が亡くなったとき、母名義の預金も含めて2,000万円以上は残っていたと思います」

 

しかし、半年ぶりに実家を訪れた田中さんは違和感を覚えました。物置と化していた、かつての自分の部屋に所狭しと段ボール箱が積み上がり、未開封の荷物が置かれていたのです。さらにテーブルの上には封筒が何通も散乱しており、手に取ると、クレジットカード会社からの請求書や督促状でした。

 

「なんだ、これっ!」

 

思わず声が出たといいます。母に尋ねても、「あとで払おうと思っていたの」「どれが何の請求か分からなくなっちゃって」と要領を得ません。

 

不安になった田中さんが、その日のうちに通帳を確認したところ、残高は1,000万円を切っていました。少なくとも2,000万円近くあったはずの資産の半分が消えていたのです。

 

「詐欺か何かに遭ったのかと思いました」

 

そう振り返ります。

残高は消えたのに、87万ポイントが残っていた

原因を調べるため、田中さんは母のスマートフォンやネット通販の利用履歴を確認しました。そこで見つけたのは、驚くほどの購入履歴。健康食品、衣類、収納用品、調理器具、日用品――同じような商品を何度も購入している記録もあります。

 

一方で、ある数字が目に留まりました。ネット通販のポイント残高です。

 

「87万ポイント……?」

 

思わず見返したといいます。 母は少し誇らしそうに話しました。

 

「そうなの。結構貯まったでしょう。1ポイント1円だから87万円」

 

しかし購入履歴を集計すると、過去数年間の支出総額は900万円近くに達していました。 田中さんは思わず聞き返しました。

 

「87万円分得するために、900万円使ったの?」

 

母はしばらく黙ったあと、「そう言われると、そうなるのかしらね」と答えました。