親子関係の断絶は、特別な家庭だけで起きる問題ではありません。親は支えているつもりでも、子どもは長年の干渉や否定として受け止めていることがあります。本記事では、70代の両親に「最後の手紙」を送り、連絡を絶った43歳女性の事例を通して、親子の価値観のずれがもたらす深刻な溝についてみていきます。
「もう限界です」〈43歳娘〉が70代両親を着信拒否。「嫌いになったわけではない、でも…」4枚綴りの手紙で親子絶縁を宣言したワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

限界を迎えた…きっかけとなった父のひと言

結婚すると距離は少し広がりました。実家のある隣の県に住み、夫と家庭を築き、子どもにも恵まれました。それでも電話をすれば近況報告を求められます。そして何かを話すたびに助言が返ってきました。

 

「子どもはそう育てないほうがいい」

「家はもう少し待ってから買ったほうがいい」

「その学校で本当に大丈夫なのか」

 

当時は大きな口論にはなりませんでした。ただ、美咲さんは少しずつ疲れていったといいます。

 

「相談するために電話をしたわけではない。近況を報告するために電話をしているんです」

 

そう思う場面が増えていきました。転機となったのは長男の大学進学でした。進学費用の話になった際、美咲さんは両親にこう説明しました。

 

「奨学金も利用する予定です」

 

すると父は、

 

「借金を背負わせるのか」

 

と言いました。その瞬間、美咲さんのなかで何かが切れてしまったのです。

 

「また否定されたと思いました」

 

電話は途中で終わりました。数日後、父から着信がありました。出ませんでした。その後も電話は続きました。LINEも届きました。しかし返事をする気にはなれませんでした。

 

「話をしても心がザワザワするだけとわかっていました」

 

1ヵ月後、両親から手紙が届きました。心配しているという内容でした。その手紙を読んだとき、美咲さんは初めて自分の気持ちを書き出そうと考えたそうです。便箋4枚。冒頭にはこう書きました。

 

「もう限界です」

 

感情的な表現だと分かっていました。それでも、その言葉しか出てこなかったと振り返ります。手紙には素直な気持ちを綴りました。

 

「進学も就職も結婚も子育ても、いつも反対から始まった」

「もう親が庇護しなければならない存在ではない」

「距離を置きたい。こちらから連絡することはない」

 

送ったあと、気持ちは少し落ち着いたといいます。一方で、完全に吹っ切れたわけではありません。

 

「親子だから、本当は分かり合いたかったんです」

 

近年、親子関係のあり方は大きく変化しています。国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』によると、「親は子ども夫婦と暮らすべきだ」との賛成割合は2008年の50.8%から2022年には26.5%へと半減しました。また、育児の相談相手も「親」から「夫」へと逆転(夫48.7%、親38.5%)しており、親と一定の距離を保ちたい子世代の心理が統計からもくっきりと、そして客観的にうかがえます。

 

美咲さんは現在も両親と連絡を取っていません。ただ、絶縁そのものが目的だったわけではありません。「距離を置かなければ、自分が苦しくなってしまったんです」と語り、静かに続けます。

 

「本当は一度でいいから認められたかっただけなのかもしれませんね」