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死ぬ前に貯金が尽きるかもしれない…
転機になったのは今年の春でした。マンション管理組合から、大規模修繕に伴う一時負担金の案内が届いたのです。負担額は約120万円。さらに、自宅の給湯器も交換時期を迎えていました。見積額は40万円近くです。
そこへ長男から電話がありました。
「子どもの教育費が重なって厳しいんだ。少しだけ助けてもらえないかな」
田村さんは返答に詰まりました。現役時代なら迷わず援助していたはずです。しかし今は違います。頭の中では別の計算が始まっていました。
医療費は今後さらに増えるかもしれない。どちらかが介護状態になる可能性もある。物価上昇が続けば生活費も上がる。もし85歳、90歳まで生きたらどうなるのか。
「今さらながら、気づいたんです。老後資金って残高の問題じゃないんだなと」
田村さんは苦笑します。3,000万円あるから安心じゃない。3,000万円で何年暮らせるかが問題。
「あと何年、大丈夫だろうね」
老後破産というほど切迫した状況ではありません。今すぐ生活に困るわけでもありません。それでも、将来への不安は確実に大きくなっています。
はたから見れば恵まれている部類かもしれません。それでも田村さんは、毎月の家計簿を開くたびに胸の奥がざわつくといいます。
「このままだと、死ぬ前に底をつくかもしれない」
かつては考えもしなかった言葉でした。その不安は、預金残高の数字では測れないものなのかもしれません。