(※写真はイメージです/PIXTA)
仕事との両立の限界、迫られる「介護離職」の選択肢
経済的な負担だけでなく、肉体的・精神的な疲労も佐藤さんを追い詰めました。
週末に実家で介護や家事に追われ、休息をとれないまま月曜日の朝に都内の職場へ直行する生活が数ヵ月続いたことで、業務中の集中力が低下する場面が増えていきました。
さらに、平日であっても実家のケアマネジャーや医療機関からの電話対応に追われることがあり、重要な会議への遅刻や、タスクの遅れが生じるようになります。
「会社に迷惑をかけているという罪悪感と、遠くにいる母を十分に看切れていないという罪悪感で、頭がいっぱいになりました。いっそ仕事を辞めて、実家に戻ったほうが楽になるのではないかと、何度も『介護離職』の文字が頭をよぎりました」
佐藤さん、絶望的な状況のなか、追い詰められていったといいます。
現役世代が直面する介護のリアルと、両立を阻む「遠距離」の壁
厚生労働省『雇用動向調査』によると、2024年に離職した人は約719.5万人、そのうち個人的理由で離職した人は約544.2万人。さらに個人的理由で離職した人のうち「介護・看護」を理由とする人は約9.3万人(男性約3.4万人、女性5.9万人)でした。性別・年齢階級別にみると、男性では「45歳から49歳」が、女性では「55歳から59歳」が最も多くなっています。
働き盛りである40代・50代が親の介護に直面した際、佐藤さんのように経済的・精神的な限界から仕事を辞めてしまう「介護離職」は、個人のキャリアだけでなく、生活基盤そのものを揺るがす深刻なリスクを孕んでいます。
特に遠距離介護の場合、地元の介護サービスや地域包括支援センターとのタイムリーな連携が難しく、キーパーソンである子どもが一人で問題を抱え込みやすい傾向にあります。
また、移動にかかる時間とコストが直接的な負担となり、佐藤さんのように「月15万円」といった想定外の出費によって生活が圧迫されるケースは少なくありません。一度仕事を辞めてしまうと、同世代と同じ条件での再就職は容易ではなく、自身の老後にも大きな影響を及ぼします。
佐藤さんは現在、会社の「介護休業制度」の利用を申請し、一度まとまった時間を確保して実家のケア体制を再構築しようと試みています。
これまでは自分一人でなんとかしようと奮闘していましたが、ケアマネジャーと再度話し合い、ショートステイ(短期入所生活介護)の頻度を増やすなど、民間サービスに頼りすぎない持続可能なプランへの見直しを進めています。
「親を大切にしたい気持ちはありますが、自分の人生や仕事を犠牲にしてしまっては共倒れになってしまう。手遅れにならないうちに、きちんと手を打っていこうと思います」