物価高が続く昨今、お得を求めた行動である「ポイ活」が広がりを見せています。一方で、いつの間にか支出を増やしてしまうケースも珍しくありません。ある高齢夫婦のケースから、賢い家計管理と買い物の基本について考えていきます。
生活は楽ではありません…〈年金月23万円〉ポイ活に励む70代夫婦、ある日、冷凍庫の中でみた衝撃の光景 (※写真はイメージです/PIXTA)

ポイ活が夫婦げんかの火種に…

「今日はポイント5倍の日だから、今のうちに買っておいたほうが得なのよ」

 

東京都郊外に住む田中弘志さん(72歳・仮名)と、妻の美代子さん(70歳・仮名)。朝食を終えると、スマートフォンの画面を弘志さんに見せました。ドラッグストアのアプリには「日用品ポイント5倍」の通知が表示されていました。

 

夫婦の収入は、弘志さんが月15万円、美代子さんが月8万円の年金のみ。持ち家で住宅ローンはありませんが、固定資産税や修繕費、医療費などを合わせると、毎月の支出は20万円前後になります。昨年までは月2万〜3万円の黒字が出ていました。しかし、徐々に物価高の影響を受けるようになります。

 

総務省の『家計調査 家計収支編』によると、65歳以上の無職夫婦世帯における月平均消費支出は、2024年の25万6,521円から2025年には26万3,979円へと増加しています。食料品や日用品などの物価高騰が家計を直撃し、同期間の実収入が微増にとどまるなか、毎月の赤字額(可処分所得に対する不足分)は3万4,058円から4万2,434円へと大きく拡大しました。

 

「生活は楽ではありません。値上げの分、ポイントで取り返さないと」

 

美代子さんはそう言い、週に3回ほどドラッグストアやスーパーを回るようになりました。その日、夫婦が購入したのは、トイレットペーパー12ロール入り4パック、ティッシュペーパー5箱入り3セット、洗剤の詰め替え10袋、レトルト食品20食分、そして大量の冷凍食品が積まれた買い物かごでした。

 

会計は1万9,800円。ポイント還元は約990ポイントでした。

 

「1,000円近く戻るんだから、実質1万8,800円くらいで買えたわ」

 

美代子さんは満足そうでした。問題は、そうした買い物が月に何度も繰り返されたことです。

 

「今月はチャージで3,000ポイント」

「週末は抽選で10倍」

「アプリ登録で500ポイント」

 

通知が届くたびに、美代子さんは「今買わないと損」と感じるようになっていきました。4月の日用品費は1万8,000円。5月は2万9,000円。6月には3万7,000円に達しました。一方で、ポイント残高は1万2,000ポイントまで増えていましたが、そのポイントを使う前に新しいキャンペーンが始まってしまいます。

 

「ポイントで払うともったいないのよ。現金で払えば、またポイントが付くから」

 

弘志さんは思わず声を荒らげました。

 

「ポイントを貯めるために現金を使ってるじゃないか。意味が逆だろ」

 

しかし美代子さんも引き下がりません。

 

「あなたは昔の人だから分からないのよ。今はみんなポイ活してるの」

 

夫婦げんかの原因は、以前は電気代や食費の節約が中心でした。しかし最近は「どのキャンペーンを使うか」「どこで買えば還元率が高いか」が主な争点になっています。