帰省した孫に手渡したお小遣いを拒否され、言葉を失ってしまった70代の夫婦。その背景には、デジタル世代とシニア世代における“格差”があったのです。変わりゆく時代の中で、世代を超えて気持ちを届け合うにはどうすべきか、考えていきます。
「おじいちゃん、このお金いらない」…〈年金月25万円〉70代夫婦、帰省した孫が「1万円入りポチ袋」をその場で突き返した「驚きの理由」 ※写真はイメージです/PIXTA

新札を用意した朝

「今年は1万円にしようか」

 

昨年のお盆。東京都内のマンションに住む佐藤正一さん(74歳・仮名)は、妻の和子さん(72歳・仮名)と相談しながら、銀行で新札を2枚引き出しました。帰省してくる中学生と小学生の孫に渡すためです。

 

佐藤さん夫婦の年金は、夫婦合算で月25万円ほど、手取りにすると22.5万円ほどでした。一方、マンションの管理費と修繕積立金で月3万2,000円。毎月の支出は20万円ほどに収まるよう、質素倹約を心がけていました。そして毎月2万円前後を貯蓄にまわし、孫へのお小遣いなどに備えていたのです。

 

「子どもが小さいうちは、封筒を開ける瞬間が楽しみなんだよ」

 

正一さんはそう言いながら、文具店で選んだポチ袋に用意した新札を丁寧に入れていきます。娘夫婦と孫2人が到着し、昼食を終えたあと、正一さんはポチ袋を差し出しました。


「はい、お盆玉」


小学4年生の孫は素直に受け取りました。しかし、中学2年生の翔太さん(仮名)は、封筒を手に取ったまま、少し困った顔をしました。


「おじいちゃん、これ……現金?」

「そうだよ。1万円入ってる」

 

すると翔太さんは、周囲を気にするように一瞬視線を動かし、こう言いました。

 

「ごめん、現金は使いづらいから、スマホで送ってもらえる?」

 

その場の空気が止まりました。正一さんは冗談だと思い、「あとでコンビニで使えばいいじゃないか」と返しました。ところが翔太さんは、ポチ袋をそのままテーブルに戻したのです。

 

「友だちと遊ぶとき、みんなスマホで割り勘するんだ。現金だと両替もしないといけないし、親に預けることになるから」

 

娘が慌てて「翔太、そういう言い方は失礼でしょ」と注意しましたが、本人に悪気はありませんでした。

 

総務省『令和7年 通信利用動向調査報告書(世帯編)』によると、インターネットでの商品購入時の決済手段として「QRコード決済」を含む電子マネーを利用する人の割合は45.8%に達しており、年々着実に増加しています。

 

また、翔太さんと同世代である13〜19歳のスマートフォンによるインターネット利用率は90.8%と高く、スマホは不可欠な生活基盤です。祖父母世代にとっては「新札の手渡し」が特別な意味を持ちますが、デジタルネイティブな若者にとっては、友人との割り勘などをスマホ一つで完結できる電子マネーこそが「日常的で使いやすいお金」へと変化しているという、世代間の価値観のギャップがうかがえます。