(※写真はイメージです/PIXTA)
輝かしいキャリアからの暗転
都内・大手メーカーで長年、管理職として活躍してきた佐藤晴彦さん(60歳・仮名)。現役時代は100人以上の組織を統率し、売上拡大を牽引してきました。当時の年収は約1,200万円。社内でも一目置かれる存在でしたが、60歳の定年を迎えたその翌日から、佐藤さんの社内での立ち位置は一変することになります。
佐藤さんは定年後、同社の再雇用制度を利用して勤務を継続することを選択しました。しかし、提示された新しい契約条件は、現役時代とはかけ離れたものでした。
「週4日勤務の嘱託社員です。月給ベースで約25万円、年収は約350万円。これまでの3分の1以下にまで激減しました」
仕事内容自体は、かつての経験を活かした営業の後方支援や、若手社員の指導が中心。
「責任を負わない仕事ばかりです。嘱託社員だから、仕方がありません」
「まだしがみつく気?」若手からの冷ややかな視線
立場が変わったことで、佐藤さんは社内の人間関係における微妙な変化を感じるようになったといいます。特に、20代から30代の若手社員との間に流れる空気は、決して好意的なものではありませんでした。
オフィスの給湯室や通路ですれ違う際、若手社員たちが佐藤さんのほうを見ながら小声で話している姿を目にすることが増えました。ある日、佐藤さんは偶然、後輩たちが囁き合っているのを耳にしてしまいます。
「あの人、まだ会社にしがみつく気なのかな」
「気を遣うから嫌なんだよね」
「煙たがられていること、分かっていると思うけど」
まさか当の本人に聞こえているとは知らず、若手社員は言いたい放題。
「定年を迎えた元上司がいるわけですから、気を遣うのは無理もない。私も経験ありますし。しかし、直接『老害だ』と耳にすると、へこみますね」
かつて個室の部長室にいた佐藤さんのデスクは、今やオフィスの片隅、窓際の小さなスペースに移されています。
それでも佐藤さんは、毎朝誰よりも早く出社し、黙々とパソコンに向かい続けています。