(※写真はイメージです/PIXTA)
「出金したければ、保証金を」
1週間ほどが経ち、画面上の報酬額が5万円を超えたため、小林さんは自身の銀行口座へ出金する手続きを行いました。ところが、画面にはエラー表示が出現します。不審に思った小林さんがLINEで担当者に問い合わせると、それまでの口調から一転、事務的な返答が返ってきました。
「『初めての出金にはアカウントの有効化が必要です。保証金として30万円を一時的に振り込んでいただく必要があります』と言われました」
その30万円は出金時に報酬と一緒に全額返金される、というのが相手の説明でした。小林さんは一瞬戸惑いましたが、画面上には自分が作業して得た「5万円」の文字がありました。ここで辞めてしまえば、これまでの労働が無駄になる。
さらに「今日中に振り込まなければアカウントが凍結され、違約金が発生する可能性がある」と規約のスクリーンショットを送りつけられ、冷静な判断力を失ってしまいました。
小林さんは、手元にあった退職金の一部から30万円を指定された個人名義の口座に振り込みました。しかし、事態は好転しません。
「翌日、今度は『振り込みの確認コードに誤りがあり、システムがロックされた』と言われました。解除にはさらに50万円が必要だと言われ、合計で80万円を振り込んでしまったのです」
その後、担当者との連絡は完全に途絶え、副業サイト自体もアクセス不能になりました。小林さんが失った金額は、わずか3日間のうちに合計80万円にのぼりました。
「シニア副業詐欺」の深刻化
国民生活センター『2024年度 65歳以上の消費生活相談の状況』の資料によると、契約当事者が65歳以上の相談件数は2024年度30万4,130件で、前年から約2万6,500件増加。相談全体に占める契約当事者が65歳以上の相談の割合も38.6%と高水準。
また同センターは「副業サポートや投資の名目で借金させる業者に注意!」と“副業詐欺”に対して警鐘を鳴らしています。ターゲットになりやすいのは、収入の低い若年層ですが、小林さんのような年代を含む、収入を大きく減らすことの多い定年世代も広く狙われています。
かつての副業詐欺は「最初に高額な情報商材を購入させる」手口が主流でしたが、近年は「最初は費用を請求せず、作業をさせて安心させた後に、出金手数料やシステム解除料名目で次々と高額な費用を振り込ませる」という『後出し型』の手口が急増しているといいます。
「まさか自分がこんな詐欺に遭うなんて、夢にも思いませんでした。収入が減ってどうにかしたいという焦りに、まんまと付け込まれました」
小林さんには、少し前まで管理職だったというプライドがあったからこそ、誰にも相談できず、自分の判断だけで突っ走ってしまったといいます。妻に被害を打ち明けたときの申し訳なさは忘れないと語ります。
・「誰でも簡単に稼げる」
・「初期費用ゼロ」
耳障りのいい言葉を強調する広告には要注意です。万が一、少しでも不審な請求を受けた場合は、一人で抱え込まずに、すぐに消費者ホットライン「188(いやや)」や警察に相談することが重要です。