(※写真はイメージです/PIXTA)
上司と対話することの本来の意義
一方で、同じようなモヤモヤを抱えながらも、そこから抜け出した人たちもいます。その人たちがやったことは、特別なスキルを身につけたことでも、大きな決断をしたことでもありません。上司に時間をもらい、「自分がどのように見られているのか」「何を期待されているのか」を率直に確認しただけでした。最初は、「こんなことを聞いていいのだろうか」「面倒な部下だと思われないだろうか」「今さら聞くなと思われないか」という不安はあったそうです。
それでも実際に話してみると、上司の反応は想像とまったく違っていたと言います。「そういうことを考えていたとは知らなかった」「もっと早く聞いてほしかった」。そんな言葉が返ってくるケースは少なくありません。
ギャップやモヤモヤの正体が分かって、すぐに環境が変わったわけではありませんでしたが、「何を期待されているのか」「どこを目指せばいいのか」が見えるようになって仕事との向き合い方は大きく変わったそうです。ギャップは、我慢することで消えるものではありません。自分の感じているギャップを伝え、上司の感じているギャップを聴き、お互いがさらけ出すことで、初めて解消に向けて動き始めます。
ボスマネジメントとは、そのきっかけを自分からつくるスキルでもあります。
上司と部下は、「上下関係」ではなくフラットな「協働関係」
では、なぜ相手が上司になると、話しづらくのなるのでしょうか。それは、日本の社会には、「上司と部下は文字通りの上下関係である」という感覚が根強く残っているからかもしれません(本記事も、その点で「上司・部下」という言葉を使うことが望ましいのかは検討しましたが、分かりやすさを優先して使っています)。
上位役職者のほうが情報や権限を持っているのはたしかですが、だからといって部下が上司と違う意見を述べてはいけないというルールはどこにもありません。しかし、“上下関係”という意識があると、どうしても意見を述べることに躊躇してしまいます。
その点、ボスマネジメントが先行している海外は、“上下の指揮命令関係”というより、“業務遂行に向けたフラットな役割関係”と捉えるのが一般的です。
ハーバード・ビジネススクール名誉教授のジョン・P・コッターは『リーダーシップ論』(ダイヤモンド社)の中で、「上司が仕事を成功させるために、どれくらい部下の助けや協力を必要としているか」「上司にはどのようなプレッシャーがあるのか」を理解する必要性を説いています。リーダーシップは、リーダー一人で発揮されるものではなく、メンバーのフォロワーシップが必要不可欠です。
上下関係ではなくフラットな役割関係だと認識できれば、お互いの立場やプレッシャーを尊重しながらも、より良い成果創出に向けて率直な意見を交わすことができるのです。