現在、日本では深刻な人手不足が叫ばれる一方で、50代以上のミドル・シニア層が希望する条件で再就職することは困難なケースも。長年培った経験やスキルが、外部市場では必ずしも評価されないというミスマッチが起きているのです。ある男性のケースを通して、中高年が直面する再就職の厳しさをみていきます。
「情けない、本当に情けない…」〈年収900万円〉57歳サラリーマン、自信満々に再就職活動も「書類150件落ち」の衝撃。大手企業の肩書が通用しない「過酷な現実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

50代・再就職、高過ぎる壁

厚生労働省『令和6年 雇用動向調査結果』によると、50代男性の離職理由は「その他の理由(出向等を含む)」が高い割合を占めるのが特徴のひとつです。

 

50代前半(50〜54歳)で20.4%、50代後半(55〜59歳)で29.0%に達しており、他の年代と比較しても突出して高くなっています。また、「会社都合」での離職も50代前半で8.6%、50代後半で10.9%と一定の割合を占めており、年齢が上がるにつれて企業側の事情による離職や移動が増加する傾向が伺えます。

 

一方で50代男性の転職入職率は50代前半で4.7%、後半で4.3%と低水準にとどまっています。さらに賃金面での厳しさも顕著で、50代後半の転職者では前職より賃金が「減少」した人の割合が36.6%に上り、「増加」した割合(27.4%)を逆転します。賃金が「1割以上減少」した人も3割(30.7%)を超えており、収入ダウンを余儀なくされるケースが多いことが伺えます。

 

「結局、私が自信満々に思っていた能力は、会社の看板と組織の仕組みがあったからこそ発揮できたものだったんでしょうね」と佐藤さん。

 

ある面接で、面接官から「具体的にITツールを使いこなせますか?」「現場の作業を自ら手を動かして完遂できますか?」と問われた際、佐藤さんは即答できませんでした。部下に指示を出し、進捗を管理することに特化してきたため、実務の詳細から遠ざかっていたのです。

 

「自分はマネジメントができるといってきましたが、それはひとつの組織の中で、決められたルールに則った上での話でした。他の会社でも力を発揮できるかといえば……150件以上の不採用通知が、私の市場評価を物語っています」

 

現在、佐藤さんは当初希望していた「経営コンサルタント」や「相談役」ではなく、地元のビル管理会社の事務職として働いています。年収はかつての半分になりましたが、表情に悲壮感はありません。

 

「プライドを捨て、今の自分に何ができるかをゼロから考え直しました。今はエクセルの関数を学び直し、現場の清掃スタッフの方々が働きやすいシフト表を作成しています。感謝される喜びは、大手企業時代とはまた違った手応えがあります」