(※写真はイメージです/PIXTA)
「あれ、なんでだろう…」親友の子どもの“無邪気な笑顔”に突きつけられた〈残酷な現実〉
そんな生活が半年を過ぎたころ、学生時代からの親友であるケンジさんから連絡が入りました。
「一軒家を建てたから、遊びに来ないか? 子どもも大きくなったんだ、遊んでやってくれよ」という誘いでした。タクヤさんは重い腰を上げ、デパートで高価なおもちゃを手土産に、親友の新居を訪ねました。
玄関を開けると、小学校低学年と幼稚園児の兄弟が元気よく走り回っていました。
「タクヤ、よく来たな! ほら、パパの友達だよ」
ケンジさんに紹介されると、子どもたちは最初こそ「このおじさん、誰?」と不思議そうな顔をしていましたが、すぐにおもちゃに目を輝かせ、タクヤさんのもとに近づいてきました。
「おじさん、これどうやって遊ぶの?」「見て、僕の部屋もあるんだよ!」
小さな手を引かれ、鬼ごっこやブロック遊びに付き合ううちに、タクヤさんは久しぶりに心の底から笑っている自分に気づきました。自分の名前を何度も呼び、屈託のない笑顔を向けてくれる子どもたち。それを見守る親友夫妻の穏やかな表情。
そこには、タクヤさんが画面越しに眺めている「株価の数字」とはまったく別次元の、温かい時間が流れていました。
「俺はローンの返済も仕事も大変だけど、この子たちが生きがいなんだ。自由になった今、タクヤは何が一番楽しいんだ?」というケンジさんが別れ際に発した一言が、タクヤさんの胸に刺さりました。
「まあ、毎日好きに生きてるだけで幸せだよ」と、タクヤさんは適当な返事をして、ケンジさんの家をあとにしました。しかし、帰宅した瞬間、猛烈な虚無感に襲われました。
1億円の資産はあっても、自分を必要としてくれる人は誰もいない。ケンジさんの家での出来事が、タクヤさんの孤独をより一層際立たせたのです。
「あれ、なんでだろう……。お金があれば幸せになれると思ってた。でも……」
ケンジさんの子どもたちの笑顔を見て、自分が一番ほしかったのは、誰かと繋がっている実感だったのかもしれない。自由と引き換えに大切なものを失っていたことに、タクヤさんは気づいたのです。
[参考資料]
内閣府「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和6年)」
内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書(令和7年)」