内閣府の調査によると、退職や離職をきっかけに「孤独感」を抱く人が約15%に上ることがわかっています。十分な資金を用意して早期リタイア(FIRE)を果たしても、社会との接点を失い、想定外の虚無感に襲われるケースは決して珍しくありません。資産1億円を築き、40歳で念願のFIRE生活をスタートさせた独身男性のタクヤさん(仮名・40歳)もその一人です。ある日、親友の家族と触れ合うなかで気づいた「お金では買えないもの」とは。
昼過ぎに起き、食事はUber Eats、風呂は3日に1回…〈資産1億円〉でFIREした40歳独身男性。「あれ…」親友の子どもの“無邪気な笑顔”に突きつけられた〈残酷な現実〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

早期リタイアの落とし穴…孤独感を防ぐ「サードプレイス」の重要性

内閣府が実施した「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和6年)」によると、現代社会において多くの人が孤独感や孤立感を抱えて生きている実態が浮き彫りになっています。なかでも注目すべきは、現在の孤独感に影響を与えた出来事として「退職・離職」といったライフイベントが一定の割合を占めている点です。

 

同調査において、孤独感を抱えている人がそのきっかけとして「転校・転職・離職・退職(失業を除く)」を挙げた割合は14.7%に上っています。会社員として働いているあいだは、意識しなくても職場での人間関係や取引先とのやりとりなど、日常的な社会とのつながりが維持されています。

 

しかし、早期リタイアによって組織から離れると、こうしたつながりは途絶えてしまいます。十分な生活資金を準備してリタイア生活に入ったとしても、人との関わりを持たないまま毎日を過ごすうちに、社会から取り残されたような強い孤独感に苛まれるケースはあとを絶ちません。

 

さらに、内閣府が公表した「満足度・生活の質に関する調査報告書(令和7年)」によれば、職場や家庭以外の「第三の居場所(サードプレイス)」の数が多い人ほど、「生活の楽しさ・面白さ」や「社会とのつながり」に対する満足度が高くなる傾向が明確に示されています。

 

FIRE後の生活において、資金計画と同じくらい重要になるのが、仕事に代わる社会との接点(サードプレイス)をいかに構築し、維持するかという課題なのです。

 

十分な資産を築いて念願のFIREを達成したものの、社会とのつながりを失い、想定外の虚無感に襲われた独身男性の事例を見ていきましょう。

約20年間の労働から解放…資産1億円のFIRE生活で手にした「自由」

「自由を求めて頑張ってきたはずなのに。あの子たちの笑顔を見ていたら、本当の幸せが何なのかわからなくなってきました……」

 

タクヤさん(仮名・40歳)は都内の大手企業に勤め、年収900万円を稼ぐ会社員でした。独身を貫き、親からの相続分3,000万円も含めて資産1億円を達成したのを機に、1年前に辞表を提出。念願のFIRE生活をスタートさせました。

 

リタイア後は、資産の大半を安定した利回りで運用し、余剰資金で個別株の短期トレードを行う毎日。

 

「何時に起きたっていい、なんて最高な毎日なんだ!」

 

当初は自由な生活に喜びを感じていましたが、次第に生活は荒れていきます。

 

昼過ぎに起きてパジャマのままパソコンのモニターに向かい、食事はUber Eatsで注文。お風呂に入るのも面倒で3日に1回。引きこもり状態が続いていたタクヤさん。