長年連れ添った親を看取り、ようやく一息ついた矢先に直面する相続の問題。 家族のために尽くした年月が、必ずしも希望通りの形になるとは限りません。 ある女性のケースから、円満な資産承継のために知っておくべきことをみていきます。
51歳娘の献身、享年82歳の父が最期に残した封筒の中身。介護負担ゼロの54歳兄に「実家」を譲るという「奇妙な遺言書」の真意 (※写真はイメージです/PIXTA)

「介護の献身」は報われないのか

親の介護に尽力した子が、相続において他の兄弟姉妹よりも多くの財産を受け取れると考えるのは自然な心情です。 しかし、日本の法制度において「寄与分」が認められるハードルは、非常に高いことで知られています。

 

裁判所『令和5年度 司法統計』によると、家庭裁判所で調停・認容された遺産分割事件のうち、寄与分が認められたのは7,234件中62件、割合にして0.86%ほど。 日常的な家事援助や介護の多くは「親族間の扶助義務」の範囲内とみなされる傾向にあるのです。

 

また、相続財産の構成にも課題があります。 国税庁『令和5年分 相続税の申告事績』によると、相続財産の金額構成比において「土地」が31.5%、「家屋」が5.0%。これらを合わせた不動産は約36.5%に達し、依然として大きな割合を占めています。 一方、現金・預貯金等は35.1%となっており、今回の事例のように、不動産という「分けることが難しい資産」が、現預金という「分けやすい資産」を上回るケースは決して少なくありません。

 

父・正一さんが選んだ「あえて不動産を渡さない」という選択は、法的な公平性よりも、子の将来の自由度を優先したものでした。 不公平感を解消するためには、遺言書の「付言事項」を活用し、なぜそのような配分にしたのかという親の意図を明文化することが不可欠です。

 

感情的な対立を防ぐためには、親が元気なうちに「誰に何を遺すか」ではなく「誰にどのような人生を送ってほしいか」という視点で家族会議を行うことが、有効な解決策となります。

 

 

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