親の介護が必要になったとき、多くの人が「親の貯蓄で費用を賄えばいい」と考えがちです。しかし、いざ支払いの段階になって、目の前にあるはずの資産が使えないという事態も珍しくありません。十分な蓄えがあるにもかかわらず、息子が老人ホーム費用を肩代わりしているケースをみていきます。
「暗証番号、なんだっけな…」88歳父のつぶやきで口座凍結。「月20万円」を肩代わりする54歳息子の後悔 (※写真はイメージです/PIXTA)

認知症600万人時代に潜む「資産凍結」の真実

高橋さんの身に起きた事態は、超高齢社会の日本において誰にでも起こり得る問題です。厚生労働省の推計によれば、2040年時点での認知症患者数は、およそ584万人になるといわれており、資産管理のリスクは年々高まっています。

 

銀行などの金融機関は、預金者の判断能力が不十分であると判断した場合、本人の財産を親族による使い込みや詐欺から守るために口座を即座に凍結します。これが結果として、高橋さんのように家族による正当な介護費の支払いさえも阻む要因となってしまいます。

 

解決策として提示される成年後見制度も、利用者にとって経済的な重荷となる側面が否定できません。最高裁判所の司法統計資料『成年後見関係事件の概況』によると、後見人に親族が選ばれる割合は19.1%に留まり、残りの約8割には弁護士や司法書士等の専門家が選任されています。この場合、管理財産額に応じて本人の資産から月額2万〜6万円程度の報酬が、亡くなるまで永続的に支払われ続けます。

 

法務省の啓発資料が示す通り、こうした負担を避け、凍結後も柔軟に資産を管理するためには、本人の判断能力が確かなうちに「家族信託契約」や「任意後見契約」を公正証書等で締結しておく必要があります。

 

窓口で意思疎通が困難と判断された後では、これらの法的対策を講じることは不可能です。遺す側と遺される側の双方が生活を維持するためには、判断能力が十分な時期に、具体的な資産管理の契約を完了させておくことが不可欠です。

 

 

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