(※写真はイメージです/PIXTA)
迷いの果てに選んだのは「豪華客船での世界一周」
トモコさんは当初、将来への不安から退職金を一銭も使わずに貯金し、節約に励もうと考えました。しかし、四十九日を終えたころ、夫の遺品である手帳に記された「退職したら夫婦で行きたい場所リスト」をみつけ、胸が締め付けられます。
「夫は一生懸命働き、家族のためにお金を残してくれました。でも、その夫はもういない。私まで不安を抱えてただ生き延びるためだけにこのお金を抱えていて、果たして夫は喜ぶだろうか」
悩んだ末、トモコさんは決断を下します。退職金のなかから1,100万円を投じ、最高級クラスの豪華客船による「世界一周クルーズ」を申し込んだのです。
息子たちは「正気か」と驚き、全力で反対しました。「年金が月11万円しかないのに、1,000万円以上を遊びに使うなんて無謀だ」と。何度も説得されましたが、トモコさんの考えは変わりません。彼女は残りの2,200万円を「万が一の介護・医療費」として、大手銀行の定期預金と個人向け国債に堅実に振り分けました。そのうえで、豪華客船という「安全なコミュニティ」に身を置き、世界を回ることで、夫とみるはずだった景色を全部みてこようと考えたのです。
老後も、自分の人生を歩むために
100日間にわたる航海を終えて帰国したトモコさんの表情は、以前とは見違えるほど明るくなっていました。
「船内では世界中から来た同世代の方々と交流しました。自分の意志で決断し、自分の足でピラミッドやヴェルサイユ宮殿をみたことで、一人で生きていく覚悟ができたんです。夫と一緒だったら、もっと楽しかったでしょうけどね……」
トモコさんの事例は、高齢期における「資産の価値」を問い直してくれます。内閣府の「高齢者の経済生活に関する調査」(令和元年度)では、高齢者の生活満足度は単なる所得の多さよりも、主観的な健康感や社会との繋がりに強く相関することが示唆されています。
3,200万円を銀行に寝かせ、月11万円の年金で不安に震えて過ごす老後よりも、お金を「一生の思い出」に変え、残りの資金で質素ながらも自立して生きる道を選んだトモコさん。
大切なのは、夫が財布を握っていたとしても、遺された側が現状を正しく把握し、「自分はどう生きたいか」という視点でお金の手綱を握り直すことです。3,200万円という資産は、トモコさんにとって、夫の思い出から卒業し、自らの人生を漕ぎ出すための「乗船券」となったのです。
もし、あなたがいま、家計管理を配偶者に任せきりにしているなら、まずは最新の「ねんきん定期便」を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。自分の将来の受給額を把握すること。その一歩が、予期せぬ事態を「絶望」ではなく「再出発」に変える鍵となります。
豪華客船の旅から戻ったトモコさんは、現在、残った資産を管理しながら、地域のボランティア活動に精を出しています。クルーズ旅行で得た知見や友人との繋がりは、彼女にとって、いかなる金融商品よりも価値のある「心の資産」となっているようです。
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