(※写真はイメージです/PIXTA)
老後を二人で楽しむはずが…定年直後の夫の急死
都内の住宅街に住むトモコさん(仮名/65歳)は、夫が定年退職を迎えた直後、人生最大の転機を迎えました。夫は中堅メーカーの役員として長年勤め上げましたが、退職からわずか1ヵ月後、趣味のゴルフ中に心筋梗塞で急逝したのです。
夫は愛情深かったものの、やや亭主関白な人でした。家計の主導権はすべて夫が握っており、トモコさんに渡されるのは毎月の生活費のみ。貯蓄額や投資状況、さらには夫がいくら稼いでいるのかさえ、短大卒業後に花嫁修業を経て結婚という永久就職をしたトモコさんは、40年間詳しく聞いたことがありませんでした。
「夫に任せておけば安心」と信じ込んできたトモコさんの前に残されたのは、3,200万円という退職金が振り込まれた通帳と、複雑な相続の手続きでした。
金融知識ゼロの主婦を狙う「老後不安」のワナ
夫亡きあとのトモコさんの年金収入は、遺族年金と自身の基礎年金を合わせて月額約11万円。退職金以外の預金や株式は、息子たちと相続でわけるとわずかしか残りませんでした。
夫が高年収でありながら貯蓄が伸びなかったのには理由がありました。役員としての面子を保つための高額な交際費、外車や高級時計への支出。そしてなにより、2人の息子の私立小学校から大学の学費と留学費用、さらには孫の学費までを援助し、住宅ローンを定年直前に完済させたためです。
「この3,200万円を1円も減らしてはいけない」トモコさんは、そう固く決意しました。
しかし、どこで聞きつけたのか金融機関の担当者が次々と訪れます。「元役員の奥様なら資産運用は常識です」「毎月分配型の投資信託で、年金を補いましょう」といった話が舞い込みました。
日本銀行の金融広報中央委員会が公表した「家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)」によれば、高齢者世帯は多くの金融資産を保有している一方で、金融リテラシーの自己評価と実力が乖離している傾向がみてとれます。特に、一度も自身で資産管理を行ってこなかった人にとって、数千万円という大金は、守るべき資産であると同時に、一歩間違えれば食い物にされる危うい標的でもありました。
