「結婚して子どもを育てる」という、かつての当たり前が、とてつもなく高いハードルになっている――。厚生労働省が継続して追跡している最新の縦断調査からは、今どきの結婚・出産のリアルな姿が浮かび上がってきました。ある夫婦の一例から、子育て世帯の苦悩をみていきます。
世帯年収1,400万円のパワーカップルでも「2人目は無理」の現実。夫「休日6時間拘束」という高すぎる壁に正社員共働き夫婦が絶望 (※写真はイメージです/PIXTA)

30代共働き夫婦の「限界点」

「2人目の壁は、想像以上に高いです」

 

都内のIT企業で正規雇用として働く佐藤健太さん(34歳・仮名)は、冷めたコーヒーを口にしながら、静かにそう漏らしました。妻の美咲さん(33歳・仮名)も同じくメーカーの正社員。世帯年収は決して低くありません。第1子が誕生して2年、周囲からは「そろそろ2人目は?」と聞かれることも増えましたが、2人の返事は慎重です。

 

「私も妻も、家事や育児は『夫婦で同じように責任を持つべき』と考えています。だからきちんと役割分担を決めて、家事も子育てもこなしています」

 

実際に健太さんは週に2~3回は保育園の迎えに行き、園の準備などを行っています。休日も全部屋に掃除機をかけ、風呂掃除をするのは健太さんの役割。子どもを公園に連れていき、全力で遊ぶのも健太さんの役目です。そのようななか「お互いに責任ある仕事を抱えながら、これ以上育児の比重を増やす余裕はありません。今の生活を維持するだけで精一杯です」と語ります。美咲さんも、出産後に同じ職場に復帰しましたが、職場での立場やキャリアへの影響、そして何より日々の体力的・精神的な消耗を感じています。

 

「夫は家事にも育児にも協力的です。でも、2人目が生まれたとき、今の生活を維持できるか……自信がありません。もう1人ほしいけれど、現実的には難しい」

 

かつての世代よりも「協力的な夫」と「自立した妻」という、一見、今どきの夫婦像を体現している佐藤さん夫婦。しかし、2人目の壁は想像以上の高さです。

 

「私の年収は800万円弱で、妻は600万円ほど。共働きなので、経済的には余裕があります。ただ2人目となると、どちらかが仕事をセーブしないと無理。そうなると経済的には厳しくなる。2人目を考えた先には、絶望しかありません」