(※写真はイメージです/PIXTA)
「あと何年持つのか」初めて向き合った現実
埼玉県に居住する中村高太郎さん(72歳・仮名)は、かつて営業職として勤務し、60歳の定年退職後も65歳まで再雇用制度を利用して働いてきました。現在は年金月額18万円を受給しながら生活をしています。
住宅ローンはすでに完済し、子どもたちも独立。日々の暮らしにおいて贅沢を好む性格ではないことから、自身の経済状況に対して「特段の支障はなく、維持できている」と考えていました。
そんな中村さんが自身の家計の実態と向き合うことになったのは、長女からの問いかけがきっかけです。現在の収支状況について「毎月いくら不足しているのか」と尋ねられた際、中村さんは具体的な金額を即答することができませんでした。
「そんな調子だと、破産しちゃうよ」
と呆れる長女。この出来事を機に、自身の通帳と家計の支出項目を詳細に精査したところ、毎月の支出はおおよそ22万円に達していることが判明しました。
年金の額面は18万円ですが、社会保険料などを差し引いた手取り額は約15.4万円。支出が22万円という事実は、毎月6.6万円ほどの赤字が発生していることを意味します。この不足分は、無意識のうちに現役時代に蓄えた貯蓄から補填されていました。
「少ないなりに退職金も受け取っていたので『お金が足りなくなる』という発想がなかった。むしろ使い切ることはできず、子どもたちにどのように相続したらいいかなど、ぼんやりと考えていたほどです」
中村さんは、長女の助言を受けて金融機関が提供する簡易シミュレーションを実施しました。現在の貯蓄額を確認すると1,000万円を切り、実際は900万円ほど。毎月6.6万円の赤字を補填し続けた場合、資産がいつ底を突くかを試算したのです。その結果、算出された貯蓄の寿命は「約11年」というものでした。計算上、中村さんが83歳を迎えるころには貯蓄が消失するという現実を突きつけられ、本人は強い衝撃を受けました。
「ちょうど家をリフォームして支払いを終えたところだった。貯蓄は思ったほど残っていなくて、あと11年……なかなか微妙ですね」
この危機感を受け、中村さんは直ちに固定費の見直しに着手しました。具体的には通信費のプラン変更や生命保険料の整理を行い、毎月の赤字幅を約5万円ほど圧縮したそうです。
「あともう少し、節制を心がけて、何とか年金の範囲内で生活していきたいと思う。万一、長生きしたときに、子どもたちに迷惑はかけられませんから」