高校授業料の実質無償化が進み、家計の負担軽減が期待されています。しかし、支援の枠組みが広がる一方で、制度の対象世帯からは「期待していたほど楽にならない」という声も上がっています。 その背景に何があるのか。ある子育て世帯のケースから、無償化の裏で膨らみ続ける教育コストの実態をみていきます。
高校無償化でも苦しい…年収950万円・48歳サラリーマンの悲鳴。子育て世帯が直面する「隠れた教育費」の正体 (※写真はイメージです/PIXTA)

高校無償化と教育費の高騰

東京都内のIT企業に勤務する佐藤健一さん(48歳・仮名)は、2024年度から始まった東京都独自の「私立高校授業料の実質無償化」の対象世帯です。長男が都内の私立高校に通っており、これまでは年収制限によって国の就学支援金を受け取ることができませんでした。

 

2026年度からは国全体でも所得制限が撤廃される方針ですが、佐藤さんは一足早く「無償化」の恩恵を受ける形となりました。しかし、佐藤さんの家計簿には、制度導入前よりも厳しい数字が並んでいます。

 

「昨年度、学校から授業料が実質無償化されるという通知を受けた際は、家計が劇的に改善すると期待しました。年間で約48万円、月々に直せば4万円の固定費が浮く計算だったからです。しかし、現実はまったく違いました。授業料がゼロになっても、学校から請求される他の名目の費用が、それ以上に膨らんでいるのです」

 

佐藤さんが提示した直近の校納金明細を確認すると、授業料の項目は確かに「0円」と記載されています。しかし、その下には「ICT教育充実費」として月額8,000円、「施設維持費」として1万5,000円、「キャリア教育支援金」として5,000円が並びます。

 

さらに、修学旅行の積立金や部活動の遠征費、模擬試験の受験料などが加わり、月々の引き落とし額は平均して7万円を超えています。

 

「授業料は無償化されましたが、これら付帯費用はすべて自己負担です。特にICT関連の費用は年々増えている印象ですね。長男の入学時には指定のタブレット端末を約10万円で購入しましたが、2年目にはソフトウェアの更新料や、オンライン教材のサブスクリプション費用が別途請求されるようになりました」

 

佐藤さんの世帯年収は約950万円ですが、都内のマンションの住宅ローン返済が月に15万円、さらに中学3年生の長女の塾代が月に6万円かかっています。昨今の食品や光熱費の高騰も重なり、支出は増加傾向にあります。

 

「長女も兄と同じ私立高校を志望しています。二人分の授業料が仮に無償になったとしても、入学金や制服代、そして毎月の付帯費用を二人分支払うとなると、年間で150万円以上の現金手出しが必要です。無償化は確かにありがたいですが、それ以上に支出が増えているので、負担が減った感はまったくありません」

 

佐藤さんは、給与明細と学校からの請求書を交互に見つめながら、現在の心境を次のように述べました。

 

「給与は私たちの年齢だと全然上がりません。賃金アップなんて若手だけですよ。教育費も授業料無償化の一方で、それ以外の負担が増えていて、実質帳消しといったところでしょうか。市独自の経済的支援もあるようですが、これは所得制限があって、私たちは対象外。中途半端な私たちのような家庭が、一番苦しい思いをしているのではないでしょうか」