(※写真はイメージです/PIXTA)
父を心配する娘心が行き過ぎた顛末
神奈川県内の戸建てに一人で暮らす高橋澄夫さん(72歳・仮名)。月18万円の年金の範囲で、慎ましい生活を送っています。そんな穏やかな日々が変わり始めたのは半年前のこと。きっかけは、都内に住む長女の真由美さん(44歳・仮名)から「防犯と健康管理のため」と勧められ、見守りアプリを導入したことでした。
当初、澄夫さんは「離れて暮らす娘が心配してくれている」と快く受け入れました。しかし、アプリの機能であるGPSによる位置情報の共有と、歩数や活動状況のリアルタイム通知が、次第に澄夫さんの生活を縛り始めます。
「お父さん、今日はまだ300歩しか歩いていないよ。ちゃんと外に出てる?」
午前11時。リビングで新聞を読んでいると、真由美さんからLINEが届きます。少しでも返信が遅れると、今度は電話がかかってきます。
「何度も呼んだのにどうしたの? 倒れてるんじゃないかと思って心臓が止まりそうだった。家の中にセンサーを付けたほうがいいかもしれないね」
真由美さんの言葉は常に「心配」という善意に包まれています。しかし、澄夫さんにとっては、一日の行動すべてを検閲されているような圧迫感がありました。ある日、澄夫さんが友人と隣町の居酒屋へ出かけた際も、店に入って10分もしないうちに真由美さんから連絡が入りました。
「今、XX(店名)にいるでしょ。お医者さんからお酒は控えるように言われてるじゃない。何時に帰るの? 帰ったら必ずLINEして」
真由美さんがここまで澄夫さんを心配するようになったのは、2年前に澄夫さんが脳梗塞を患ってからのことでした。
「娘は私を必死に守ろうとしてくれている。でも、どこへ行っても、何を食べても、すぐにスマホ越しに叱責に近い『指導』が入る。24時間、監視下にいるみたいで……正直、疲れます」
真由美さんの干渉はさらに加速し、最近では澄夫さんの自宅の電気使用量を遠隔でチェックする「スマートメーター」の連携まで提案されています。
「お父さんのため、お父さんのため……すべて私を思ってのことなので、嫌とはなかなかいえない。しかし娘を安心させるために自由を差し出している感覚に陥る。これは正しいことなのか、自問自答しています」