長らく音信不通だった夫の訃報。駆けつけた病院で待っていたのは、自分ではなく夫の最期を看取った別の女性でした。10年、15年という歳月は、法律上の絆を腐食させるのに十分な時間となるようです。約10年前の相談事例を本人が特定できないよう脚色して、FPの川淵ゆかり氏が遺族年金の注意点について解説します。
「意地でも離婚しません」14年別居した法律上の66歳妻、亡き夫の遺族年金が“別の女性”に。戸籍より優先された〈重たい証拠〉【FPが遺族年金の落とし穴を警告】 (※写真はイメージです/PIXTA)

上手くいかない夫婦仲

現在66歳のA子さんは、20年ほど前から古着のリメイク販売業を営む女性起業家です。もともとは専業主婦でしたが、手先の器用さや服のセンスを褒められたことがきっかけで、初めは友達数人へのささやかな贈り物が評判を呼び、テレビ出演や出版を果たすほどに。一時的ではありましたがチヤホヤされて、会社を経営するまでになりました。しかし、それもわずか数年。50代に入ったころには売上が落ちてきたため、会社を閉め、規模を小さくして自営業としていまでも一人で生活できる程度には稼いでいます。

 

そんなA子さんには秘密がありました。A子さんには離れて暮らす4歳年上の夫と現在40歳の一人息子がいますが、この夫のことです。

 

夫との過去

A子さんは活発な性格で、対照的に夫はもの静かな性格でした。A子さんは、出世コースから外れた夫に「なんでお給料が上がらないの?」「私は貧乏くじをひいたのかしら」などと、日ごろから小言を浴びせていました。

 

自分の古着のリメイクビジネスが軌道に乗ると、その不満は爆発します。「もう離婚したいわ」「東京にお店を出したいから別居しましょうよ」などといじわるをいって夫を困らせました。そしてタイミングの悪いことに、夫に会社からリストラ宣告が下されます。A子さんが50歳、夫が54歳の年でした。

 

一人息子はすでに社会人となっていて教育費などもかからず、住宅ローンなどの負債もなくなった時期でしたが、「あなたはやっぱり私とは釣り合わないのよ!」と、A子さんはいつも以上に大声で夫を責め立て、自分の名前をサインした離婚届を突きつけました。それが、夫の精神的な限界点でした。