長らく音信不通だった夫の訃報。駆けつけた病院で待っていたのは、自分ではなく夫の最期を看取った別の女性でした。10年、15年という歳月は、法律上の絆を腐食させるのに十分な時間となるようです。約10年前の相談事例を本人が特定できないよう脚色して、FPの川淵ゆかり氏が遺族年金の注意点について解説します。
「意地でも離婚しません」14年別居した法律上の66歳妻、亡き夫の遺族年金が“別の女性”に。戸籍より優先された〈重たい証拠〉【FPが遺族年金の落とし穴を警告】 (※写真はイメージです/PIXTA)

判決のゆくえ…「戸籍」より強い「生活の実態」

B子さんのように、別の女性との長期間同居は、たとえ住民票をそのままに失踪したとしても、住民票より強い“実態証拠”として扱われるケースがあります。厚生労働省が示す、法律婚の破綻を認める主な基準は以下のとおりです。

 

◎離婚の合意書・メール・録音

◎別居後の生活費完全断絶(10年以上)

◎別居後に夫が別の女性と同居し、生活実態がある

◎夫が法律婚の妻の住所に戻る意思を示した形跡がない

 

裁判の結果、B子さんの主張が認められました。A子さんの夫は、家を出て数ヵ月後にはB子さんと同居を始め、14年間一度も連絡を取らず、生活費も完全に途絶えていたこと。そしてB子さんと13年間にわたる安定した共同生活があったことから、「法律婚はすでに形骸化している」と判断されたのです。

 

A子さんは敗訴のあと、こう漏らしました。

 

「離婚届を出さなかったのは、いつかは戻ってくるだろうと思っていたから。4歳も年上だったけれど、弟みたいに可愛い人だったのよ」

 

裁判では、「自分は遺族年金を欲しかったのではない。相手の女性に遺族年金が1円でも渡ることで“妻”だという顔をされたくなかった」という気持ちが両者ともに伝わってきました。今回の事例のように別居が長期化すると、思わぬ形で遺族年金の受給権を失う可能性がありますので、ご注意ください。

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表