厚生労働省の調査によると、日本の男性の平均寿命は約81歳ですが、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる「健康寿命」は約72歳。つまり、人生の晩年において「約9年間」は不健康な状態で過ごすことになります。若いうちに無理を重ね、自らの身体をすり減らして働き続けた結果が、この数字に表れているのかもしれません。今回は、大手企業を勤め上げ、現在は嘱託社員として働く60歳男性の事例から、後払いになる健康負債の恐ろしさについて解説します。
家族のためにカフェインまみれで仕事に邁進した60歳嘱託社員の末路。退職金2,600万円を手にしても「妻からは無視、娘にはLINEブロック」…心をぽっきり折った「トドメの健康診断」 (※写真はイメージです/PIXTA)

健康診断結果の残酷

家庭内に居場所がなくなり、ユタカさんはますます酒量が増えました。そんな矢先、定期健康診断の結果が送られてきました。

 

「要精密検査」の赤い文字が並び、後日病院で告げられたのは、重度の高血圧、不整脈、そして慢性腎臓病の進行でした。医師からはこう宣告されます。

 

「長年の極度なストレスと睡眠不足、そして過剰なカフェインとアルコール摂取が内臓を蝕んでいます。このままでは、数年以内に人工透析になる可能性が高いですよ」

 

これまで、毎年の健康診断で血圧や肝機能、腎機能に要経過観察の判定が出ていましたが、「疲れているだけだ」「病院に行く暇なんてない」と、ごまかしながら放置し続けていました。定年を迎えたこのタイミングで一気に悪化したようです。

 

「家族のために身体に鞭打ってきた結果がこれか……」

 

銀行口座には2,600万円というまとまった退職金があります。しかし、もう一度一緒に旅行へ行く家族もいなければ、自由な時間を楽しむための健康な身体もありません。お金だけがあっても、人生の豊かさには繋がらないという現実を前に、ユタカさんはただ立ち尽くすしかありませんでした。

後払いの健康負債

適度なカフェイン摂取は問題ありませんが、休むべきときに休まず、エナジードリンクやコーヒーによるカフェインの過剰摂取で疲労のサインを麻痺させ続けた働き方は、自らの身体に対する「健康の前借り」です。若さと気力でなんとか乗り切っているようにみえても、内臓へのダメージは確実に蓄積されていました。

 

健康診断の要観察という警告をみてみぬふりをしてきた結果、自由な時間と退職金を手にした瞬間に「厳格な食事制限」や「行動制限」という形で、一気にツケが回ってきたのです。定年後のセカンドライフにおいて、最大の資本は「お金」よりも「健康」です。現役時代に「休むことも仕事の一部」と割り切れなかった代償は、想像以上に高くつきます。