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制度で救える範囲と現実的な使い方
中村さんのようなケースの背景には、高齢者世帯の厳しい収支構造があります。
総務省『家計調査 家計収支編(2025年)』によると、65歳以上の単身世帯における1ヵ月の平均的な支出は15万5,782円。これは持ち家の場合も含む平均額のため、賃貸住まいであればさらに支出は大きくなると推測されます。
仮に年金が月13万円であれば、手取りは月11.5万円ほど。平均支出額から換算しても、月4万円ほどの赤字は避けられません。また、厚生労働省『国民生活基礎調査(2023年)』では、高齢者世帯の相対的貧困率は約20%に達しています。
こうしたなかで問題となるのが、介護や医療による追加支出です。年金水準が低い場合、これらの費用で収入の大半が消え、生活費を家族が補填するケースがほとんどです。「これ以上は……限界」という局面で中村さんが活用したのは、「同居のまま世帯分離し、生活保護を利用する」という方法でした。
生活保護は原則として世帯単位で判断されますが、一定の条件を満たせば世帯を分けて扱うことが可能です。これにより、要介護の親を単独世帯として認定し、介護扶助や医療扶助を受けることができます。特に介護扶助が適用されると、サービスの自己負担分は原則として公費で賄われるため、家計への影響は極めて大きく、支える側の負担軽減に直結します。
ただし、生活保護は生活を豊かにするものではなく、あくまで最低限度を保障する仕組みです。そのため、制度だけで全ての悩みが解決するわけではありません。
大切なのは、限界まで家族で抱え込む前に、制度を前提とした生活設計へと切り替えることです。地域包括支援センターや自治体の福祉窓口に早期相談することで、介護保険や医療制度と組み合わせた現実的な対応が可能になります。