親の介護という突然の事態に直面したとき、多くの現役世代が頼りにするのが「介護休業」という制度。しかし、制度上の給付金があるからと安心していると、思わぬ事態にさらされるかもしれません。仕事と介護を両立させるためには、単に休むだけでなく、自分たちの生活をどう守るか、という視点が必要です。ある男性のケースを通して、働き盛りの世代が直面する介護問題と経済的なリスクについてみていきます。
「手取り月41万円が22万円に…」介護休業をとった52歳課長の誤算。復帰後「よもやの収入減」に絶望 (※写真はイメージです/PIXTA)

親の介護が招いた、子世代の崩壊

都内の中堅メーカーで課長職を務める田中悟さん(52歳・仮名)。月収(額面)は約55万円で、手取りは約41万円。年収は約900万円に達します。妻と高校生の子ども2人を抱え、月12万円の住宅ローンと教育費の支出が続く――ごく一般的な、しかし余裕があるとは言い切れない家計でした。転機は、一人暮らしの母・和子さん(81歳)が自宅で転倒し、大腿骨を骨折したことでした。

 

「最初は1~2カ月世話をしたら、その後は介護サービスで何とかなると考えていたのですが……」

 

田中さんは介護休業を申請。まずは60日間の取得を決めます。給付金は休業前賃金の約67%。額面ベースでは月約37万円になる計算でした。田中さんは「7割近く出るなら、何とかなる」と考えていました。しかし、実際の入金額は想定よりもさらに少ないものでした。

 

「社会保険料と住民税の負担を考えていなかったんです。給与が出ていなくても、前年の所得に基づく支払いは続く。結果として、手元に残るお金は月22万円ほどまで落ち込みました」

 

休業前の手取り41万円と比べると、実質19万円もの減少です。一方で支出は減るどころか、むしろ増えていきました。

 

● 実家への往復交通費:月約3万円

● 入院時の立替費用:一時的に20万円超

● 退院後の住宅改修(手すり設置など):約35万円(自己負担分)

 

「働いていないから支出は減ると思っていたのに、現実は真逆でした」

 

家計はすぐに赤字に転落します。もともと毎月の貯蓄余力は5万円ほどありましたが、それが一気に消え、月10万円近い赤字が出始めました。

 

「1カ月が過ぎたころ、妻から『このままでは教育費が払えない』と言われて……」

 

さらに追い打ちをかけたのが、給付金の入金タイミングです。初回の振込は休業開始から約1カ月半後。無収入の期間が先行し、資金繰りは一気に逼迫しました。結局、60日間の予定だった休業は45日で切り上げ、職場復帰を余儀なくされます。しかし、戻った職場にも変化がありました。

 

「残業ができなくなり、月収は50万円ほど、手取りで37万円ほどになってしまって」

 

介護前と比べて、月4万円の減収が固定化してしまったのです。