手取りは新卒とほぼ同じ、なのに飲み会代は2,000円高い。「初任給バブル」の裏で、「給与逆転」と「昭和の飲み会ルール」の板挟みにあっている30代中堅社員のTさん(32歳)。残業代を含めれば後輩より手取りが少ない月もあるのに、なぜ先輩というだけで多額の自腹を切らないといけないのか。理不尽な格差に絶望する30代男性の事例を紹介します。
「手取り、新卒とほぼ同じなのに…」年収450万円・32歳中堅社員が、令和の〈初任給バブル〉と昭和の〈飲み会傾斜ルール〉に絶望 (※写真はイメージです/PIXTA)

「賃金構造の変化」と「社内イベント」が及ぼす中堅社員への影響

Tさんが直面した不満は、現在の企業が抱える「賃金構造の歪み」と「社内慣習のアップデート不足」による摩擦を示しています。

 

若手社員が会社のイベントをどう捉えているのか、データを見ると若手と中堅の間に溝を生む背景が見えてきます。株式会社マイナビの調査によれば、Z世代とされる20代の約6割が会社の飲み会に参加しています。「若者は飲み会を嫌がる」というのは思い込みに過ぎず、彼らも職場での交流自体を完全に拒絶しているわけではないことが読み取れます。

 

ただし、そこにはシビアな条件が存在します。株式会社ジェイックの調査では、「費用は会社負担」という前提であれば、若手正社員の48.2%が「夜の飲み会」に魅力を感じると回答しています。これは逆に言えば、「自腹を切るなら参加したくない」という若手社員の本音の表れとも解釈できるでしょう。

 

近年、多くの企業が優秀な人材を確保するために初任給を引き上げていますが、既存社員を含めた全体の賃金テーブルを底上げする余力まではないため、結果として若手と中堅の給与格差は縮まりつつあります。それにもかかわらず、「先輩が多く払う」というかつての給与格差を前提とした古い傾斜配分のルールを残したまま親睦会を開催し続ければ、金銭的負担を強いられる中堅社員のモチベーションが著しく低下するのは当然といえます。

 

職場の親睦イベントは、本来であれば参加者全員が気兼ねなくコミュニケーションを深めるための場です。若手社員も、単に「おごってもらえるから」参加するのではなく、「その場にどんな価値があるか」を冷静に判断しています。

 

企業は初任給の引き上げといった表面的な制度改定を行うだけでなく、社内イベントのあり方や費用負担のルールについても、現代の実態に合わせた見直しを行うべき時期に直面しています。

 

[参考資料]

株式会社マイナビ「若手社員の“飲み会離れ”は本当か?「人間関係」による離職を防げ! ~節度あるインフォーマルなコミュニケーションの可能性について~」

株式会社ジェイック「若手正社員に「職場の親睦を深める機会」について調査」