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節目に届かなかった連絡
「70歳は人生の区切りでしたが、息子には関係なかったようです」
都内の一軒家で一人暮らしをしていた佐々木久美子さん(70歳・仮名)は、当時の状況を振り返ります。久美子さんは5年前に夫を亡くし、現在は遺族年金と自身の老齢年金を合わせ、月額15万円を受給しています。自宅のローンはなく、4,000万円ほどの貯金もありました。経済的な不安はなく、穏やかな日々を過ごしていました。
しかし、70歳の誕生日を境に暗雲が立ち込めます。その原因は、長男の健一さん(43歳・仮名)。節目となる誕生日にもかかわらず、お祝いの電話もメールも届きませんでした。数日後、久美子さんから電話をかけると、健一さんは「仕事が忙しいんだ。また落ち着いたときにかけ直す」と素っ気ないやり取りだけで終わったといいます。
「親の誕生日なんて、忘れてしまうものなんでしょうね。こちらから『お祝いして』というのも図々しいですし」
久美子さんが落胆した背景には、これまでの過度な資金援助がありました。健一さんの大学院の学費や、孫の私立中学の入学金など、求められるままに数百万円単位の援助を続けてきたのです。
「息子は、私が必要なときにお金を出すのは当たり前だと思っているのでしょう。親のことは二の次であることが、はっきりと分かりました」
内閣府『令和4年度 高齢者の生活習慣と意識に関する調査』によると、子どもがいる高齢者のうち、財産を「子どもに譲りたい」と考える人は49.3%に留まっています。一方で「自分の老後のために使いたい」と考える層も一定数存在し、親子間での資産に対する認識の乖離が顕著になってきています。