介護施設への入居を検討する際、多くの人が目安にするのが「月額利用料」。しかし、予算内に収まるはずだと判断して契約したものの、実際に請求書を見て首を傾げるケースは少なくありません。ある親子のケースから、入居後に発覚する「見えないコスト」の正体と、資金計画のために知っておくべき介護費用の構造についてみていきましょう。
月25万円のはずが…82歳父「入居一時金0円の老人ホーム」に入居。54歳長男、初月請求「63万8,000円(税込)」に愕然 (※写真はイメージです/PIXTA)

介護費用の不透明が招く誤算…統計が示す現実

佐藤さんのケースは、決して特異なものではありません。むしろ、介護施設における費用構造の「分かりにくさ」が、多くの家庭で同様の誤算を招いています。生命保険文化センター『生命保険に関する全国実態調査(2024年度)』によると、介護に要する月額費用の平均は約9.0万円とされています。ただし、これは在宅介護も含めた平均であり、施設介護に限定すると負担は大きく上昇します。

 

同調査では、施設利用者の中には月額15万円以上の負担となるケースも多く確認されています。さらに実際には、介護保険の対象外となるサービスや日常的な実費負担が加わるため、総額はそれを上回る水準に達することも少なくありません。

 

こうしたズレの背景にあるのが、「月額利用料」という表示の性質です。パンフレットに記載される金額は、あくまで居住費や食費などの基本部分であり、実際の生活に伴う費用は別途加算されます。具体的には、以下のような費用が積み重なり、最終的な請求額を押し上げます。

 

● おむつなどの消耗品費

● 通院時の付き添い費用

● 夜間対応や個別見守り

● 日常生活の細かなサポート

 

特に認知症の進行や身体機能の低下がある場合、必要なケアは増え、それに比例して費用も膨らみます。つまり、施設の価格設定以上に「どの程度の手助けが必要か」という個人の状態が、実際の支払額を左右する構造になっているのです。

 

このため、契約前には「現在の状態」だけでなく、「将来どこまで介護度が進む可能性があるか」を前提に、複数のシナリオで費用を見積もることが不可欠です。

 

高齢化が進むなか、介護施設の利用は多くの家庭にとって現実的な選択肢となっています。しかし同時に、その費用は家計に長期的な影響を与えます。安心を求めて選んだ場所が、新たな不安の種にならないために――。見えにくいコストを可視化し、余裕を持った資金計画を立てることの重要性が、いま改めて問われています。