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住宅ローン完済後に待ち受ける「維持費」の真実
住宅ローンの完済は、決して「住居費」の消滅を意味するものではありません。建物は所有し続ける限り、定期的なメンテナンスコストが発生し続ける性質を持っています。
国土交通省『令和5年度 住宅市場動向調査』によれば、リフォームを実施した世帯の平均支出額は戸建て住宅で約214万円となっています。ただし、これは1回あたりの平均値であり、実際には築25年から35年の期間に、屋根や外壁の防水工事、水回り設備、給湯器といった基幹インフラが同時期に耐用年数の限界を迎えます。
住宅金融支援機構の試算等を踏まえると、戸建て住宅の維持に必要な修繕費の累計は30年間で500万~800万円にのぼり、構造部の補修が必要な場合には1,000万円程度の資金準備が必要となります。
さらに、内閣府『令和6年版 高齢社会白書』によると、65歳以上の者のいる世帯において住宅のバリアフリー化措置を講じている割合は増加傾向にあります。同資料では、高齢者の事故の約半数が住宅内で発生していると報告されており、身体機能の低下に合わせた段差解消や手すりの設置は、自立した生活を継続するための不可避な支出となります。これらの予算をあらかじめ確保していない場合、突発的な修繕によって老後資金が大きく減少するリスクが生じます。
総務省『家計調査 家計収支編』等のデータからも、高齢期における家計の安定は、固定資産の有無よりも、急な支出に対応できる流動性資産の量に左右されることが示唆されています。住宅ローンという低金利の負債を解消するために、修繕や医療、介護に充てるべき現金を投入しすぎることは、家計の柔軟性を失わせる要因となります。
住宅は完済によって支出がなくなるわけではなく、継続的な修繕計画と予備費の確保がなければ、維持そのものが困難になるという現実は、高齢期の住まい方における留意点といえます。