(※写真はイメージです/PIXTA)
約1,600万円の割増退職金を手にして49歳で早期リタイア
「49歳のときに、会社の早期退職優遇制度に応募しました。あのまま会社にいても、ジリ貧になるのは目に見えていましたから」
現在56歳のOさんは、自身の決断を振り返ります。当時の年収は約680万円。会社から提示された優遇制度を利用することで、通常の退職金に上乗せ分が加わり、総額で約1,600万円の割増退職金を手に入れました。
「口座に1,600万円もの大金が振り込まれ、当時は『しばらくは安泰だ』と本気で思っていました」
もしあのまま我慢して60歳の定年までしがみついていれば、給与だけで約7,000万円以上は稼げていた計算になります。しかし当時のOさんは、職場の閉塞感や将来への不安から逃れたい一心で、目の前のまとまった退職金に飛びつきました。
それが、長く続く後悔の始まりだったのです。
税金と年金を考えていなかった激しい後悔
退職後、Oさんは会社の再就職支援制度を利用して、何とか別の企業に滑り込むことができました。しかし、転職先で待っていたのは厳しい現実。
「新しい会社の年収は、350万円程度。仕事や人間関係のストレスは変わらないのに、給料だけが半分以下になってしまった……」
さらにOさんを苦しめたのは、退職翌年に容赦なく襲いかかってきた税金や社会保険料の支払いでした。前年の所得をベースに計算された住民税や国民健康保険料の通知書を見て、Oさんは目の前が真っ暗になったといいます。
「手取りが激減した状態での税金の支払いは、本当にきつかったです。おまけに収入が大幅に下がったことで、将来もらえる年金まで減ってしまうなんて……。あとになってようやく気がつきました」
目先のお金に釣られ、税金や年金への影響をまったく考慮していなかった自身の甘さを、今では激しく後悔しています。
「どちらを選んでもしんどかったです……。でも、もし過去の自分にアドバイスできるなら、絶対に会社を辞めないほうがいいと伝えます」
黒字リストラと再就職の実態
Oさんのように、業績悪化ではなくキャリアの選択肢として早期退職に応じる中高年は増加傾向にあります。
東京商工リサーチの「2025年 上場企業『早期・希望退職募集』状況」によると、2025年における上場企業の同募集人数は1万7,875人に達しました。特筆すべきは、募集を実施した企業の約7割が「黒字」である点です。こうした企業は組織の若返りを目的に手厚い割増退職金を用意して退職を促していますが、その後の再就職には大きな壁が立ち塞がります。
また、マイナビキャリアリサーチLabの「ミドルシニア/シニア層のアルバイト調査(2025年)」によれば、定年退職経験者がその後の働き方で感じるイメージギャップとして、「思ったより給料が少ない(45.0%)」が最多となり、次いで「思ったより年収が下がった(43.7%)」が続くなど、中高年以降の再就職では大幅な収入減に直面するケースが一般的です。
多額の退職金は一時的な安心感をもたらしますが、翌年の重い税負担や、生涯賃金・将来の年金受取額の目減りという代償を伴います。手元の退職金だけに頼るのではなく、再就職後の手取り額を含めた長期的なマネープランを立てておくことが、早期退職で失敗しないための絶対条件といえるでしょう。
[参考資料]
東京商工リサーチ「2025年 上場企業『早期・希望退職募集』状況」
マイナビキャリアリサーチLab「ミドルシニア/シニア層のアルバイト調査(2025年)」