現代のシニア世代において、孫は生きがいのひとつとされる一方、経済的な負担になることもあります。さらに良かれと思って続けた献身が、家族仲に大きな亀裂を生むことも。ある親子の事例を通じ、過度な援助がもたらす悲劇についてみていきます。
「孫はかわいい、でも、もう限界…」〈年金月15万円〉〈老後資産2,000万円〉73歳母、孫ファーストを続けた末路。48歳長男「絶縁宣言」の理由 ※写真はイメージです/PIXTA

子育ての後悔を孫で晴らそうとした母

「結局、母は子育ての後悔を孫で晴らそうとしただけなんですよ」

 

都内のIT企業で課長職を務める佐藤直樹さん(48歳・仮名)は、淡々とした口調でそう振り返ります。現在、直樹さんは実母である恵子さん(73歳・仮名)とは、絶縁状態に近い状態です。

 

きっかけは、恵子さんが孫、つまり直樹さんの娘である美咲さん(9歳・仮名)に強いた、ある「高額な習い事」でした。

 

現在、恵子さんは都内の実家で一人暮らしをしています。5年前に夫(直樹さんの父)を亡くしたものの、生活のベースとなる年金は月15万円。さらに貯金は2,000万円ほどあり、金銭面での不安は何ひとつありませんでした。ただ、解消されない心残りがあったといいます。

 

「母はずっと『女の子が生まれたら、音楽を習わせたかった』と言っていました。私は父の影響もあり、スポーツ三昧でしたから。美咲が生まれると、ピアノとバイオリンを習わせたいと言い出したのです。『お金は私が出すからお願い』『送り迎えも私がするから』と、非常に熱く語られました」

 

当初、直樹さん夫婦は家計の身の丈に合わないと難色を示しました。しかし恵子さんは「女の子が生まれたらしてあげたかったことを、美咲にさせてあげたい。私に夢を見させて」と強く希望します。

 

その熱意に押される形で、名門音楽教室の多額の月謝や楽器代、遠征費を恵子さんが負担する生活が4年ほど続きました。一体、毎月どれほどの金額を投じていたのでしょうか。直樹さんはその内訳をこう明かします。

 

「バイオリンとピアノの月謝、それにプロを目指す子も通う特別レッスンの受講料を合わせると、月だけで15万円は超えていました。さらに楽器のメンテナンス代や発表会の衣装代、遠征費用を含めれば、年間で250万円以上は確実に出ていきました。年金だけで足りるはずがなく、貯金を取り崩していたのは明らかです」

 

しかし、こうした高齢者による「孫への教育投資」には、大きなリスクが伴います。文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」によれば、塾や習い事などの学校外活動費は学年が上がるごとに増加する傾向にあります。

 

特に私立小学校に通う児童の場合、学校外活動費の平均は年間53.9万円に上り、これに個別指導や専門的なレッスンが加われば、年間100万円を超えることも珍しくありません。

 

恵子さんの貯金は、直樹さんの想像を超える勢いで減っていきました。そして昨年、決定的な事態が訪れます。恵子さんの自宅の配管に重大な不具合が見つかり、さらに自身の歯の治療で自由診療のインプラントが必要になるなど、予期せぬ出費が重なったのです。