昨今の老人ホームは、ホテルのような豪華な設備や手厚いコンシェルジュサービスを売りにする、ラグジュアリーな施設も存在します。豊かな老後を夢見て、多額の資産を投じるケースが増える一方で、契約の複雑さが招く予期せぬトラブルも後を絶ちません。理想の終の棲家を選んだはずの夫婦が直面した、厳しい現実を見ていきます。
(※写真はイメージです/PIXTA)
30年の社宅生活を経て手にした「安住の地」の暗転
商社マンだった斉藤誠一さん(75歳・仮名)は5年前、長年の念願であった都内の介護付有料老人ホームに入居しました。現役時代は会社の福利厚生を受け、30年以上も社宅での暮らしを送り、その間に蓄えた貯蓄は7,000万円超。夫婦の年金受給額は、月額の手取りで30万円にのぼります。
「持ち家への憧れはもちろんありました。しかし現役時代は転勤も多く、我慢を重ねてきました。その分、住居費を抑えてお金を貯めることができた。最後は誰にも気兼ねせず、安心して過ごしたいと考えたのです」
斉藤さんは入居時、一時金として5,000万円を支払いました。リゾートホテルのような豪華な造りで、介護を必要としない「自立」の状態から入居が可能。さらに看護師が24時間常駐しており、万一の際も安心です。
ここは「一生安泰」の場所になるはずでした。しかし、入居から5年が経過した現在、誠一さんは施設側から提示された書面を前に、強い憤りを感じています。
「説明されていた金額と、実際に今求められている支払額に大きな乖離がある。これはもはや詐欺ではないか」
きっかけは、1年前から始まった妻・美津子さん(72歳・仮名)の認知症の進行でした。