大企業に勤め、平均以上の収入を得ている家庭であれば、将来のお金に困ることはないと考えているかもしれません。しかし現実には、収入が多いからこそ無意識のうちに生活水準が上がり、「高収入なのに貯蓄がない」という状況に陥るケースが多発しています。特に子どもが大学進学を迎える時期は、数百万円単位の教育費が家計に重くのしかかります。なぜ、ゆとりあるはずの家計が突然立ち行かなくなるのか。本記事では、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が、達也さん(仮名)の事例とともに将来のライフイベントを無事に乗り切るための、現実的な家計管理のポイントを解説します。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。
お前が思っているほど、ウチは裕福じゃないんだ…年収900万円・大企業に勤める50歳父、「私立大学のパンフレット」を広げてはしゃぐ「三男」を撃沈させた “我が家の実態”【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

長男は私立、次男は遠方の国立、三男は…

「えっ、どうしたの?」と驚く三男に対し、達也さんはついに重い口を開かざるを得ませんでした。

 

「お前が思っているほど、ウチは裕福じゃないんだ……」

 

そして、苦渋の決断として三男にこう頭を下げたのです。

 

「兄たちは私立や一人暮らしに行かせたが、もうウチにはお金がない。申し訳ないが、お前には自宅から通える国立大学に行ってほしい……」

 

幼いころから私立に通い、週末は家族で外食という恵まれた生活を当たり前のように享受してきた三男にとって、それは青天の霹靂でした。「えっ、ウチってお金ないの……? 俺だけ近くの国立一択なの……?」と、憧れのキャンパスライフを夢見ていた三男は、あまりにも残酷な現実を前に、すっかり意気消沈してしまったのです。

若いうちからの生活習慣はすぐには変えられない

達也さんは、社会人として働きはじめた当初から欲しいものをすぐ買うような生活を送っていました。結婚してからも年々収入が増えていたため、不自由を感じることはありませんでした。一方の恵美子さんも、息子たちが幼いころは専業主婦としてママ友とのランチや趣味の習い事を楽しむなど、時間にもお金にもゆとりある日々を過ごしていたのです。

 

達也さんの毎月の手取りは約50万円、ボーナスを含めると年収は900万円に達していました。しかし、若いうちからの高い生活水準が抜けず、食事も家族そろって外食で済ますことも多かったため、食費や交際費などに月に20万円近く使ってしまうことも。さらに息子たちの塾代などの教育費が3人で月10万円、自宅でのサブスク契約なども重なって、達也さんの収入はほとんどその月のうちに使い切るような状態でした。

 

2025年の総務省の家計調査収支編をみてみましょう。年収900万円の二人以上世帯における平均的な消費支出は約35万円です。しかし、このデータは世帯人員が平均3.23人の場合です。達也さん一家のように5人家族となれば、当然支出はさらに膨らむでしょう。同調査の世帯人数別データによれば、3人世帯(約32.5万円)に比べて、5人世帯(約36.5万円)の支出は1割程度多くなっています。これを先ほどの年収900万円世帯の支出に当てはめると、平均でも月々39万円程度の支出になると推測できます。

 

もちろんデータはあくまで平均値であり、同じ年収でも生活水準が高ければ、その分支出は大きく跳ね上がります。一家はまさにその典型的なケースといえるでしょう。