(※写真はイメージです/PIXTA)
6,800万円の背景にある「放置」と「時間」の威力
佐藤さんの事例は、金融資産を長期間保有し続けた結果生じた資産増大の仕組みを示しています。
日本のシニア世帯において老後資金の確保は課題となっており、金融庁の「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書(2019年)」では、高齢夫婦無職世帯の平均的な収支不足額が毎月約5万円に達すると試算されました。俗にいう「老後資金2,000万円不足問題」の発端になったものです。
今回の事例で資産が増大した主な要因は、「成長産業への投資」と「株式分割」の蓄積にあります。日経平均株価は、1990年代の低迷期を経て、現在はバブル期の最高値を更新しています。
特に通信・IT分野の銘柄においては、事業規模の拡大に伴い、1株を複数株に分ける株式分割が繰り返されてきました。この仕組みにより、追加投資を行わずとも保有株数が増加し、株価上昇との相乗効果を生んでいます。
また、証券保管振替機構の統計資料によれば、株券電子化から15年以上が経過した現在も、株主が把握していない「特別口座」に管理されたままの株式が一定数存在しています。これらは、本人や相続人が証券会社等に照会を行うことで、現在の資産価値を確認することが可能です。
厚生労働省『令和6年 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金保険(第1号)受給者の平均年金月額は15万289円。男女別では、男性が16万9,967円、女性が11万1,413円です。
平均的な受給額が月額15万円程度にとどまるなか、預貯金以外の資産が家計を支える大きな要因となります。佐藤さんのように、過去の投資経験を「単なる記憶」で終わらせず、現在の価値を正確に把握し直すことは、老後の資金計画を立てるうえで最も現実的な第一歩といえます。