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高齢者の「自己完結型」終活と親子間の意識乖離
「父との会話は、多いというわけではないけれど、少ないわけでもない。もしものときは頼ってくれると思っていたから、何も言ってくれなかったのは、正直、ショックでした」と美智子さんは語ります。
一方で、正雄さんのように「子に頼らない」とする高齢者は増加傾向にあります。内閣府『令和5年版高齢社会白書』によると、自身の身体が虚弱化した際の「介護の依頼先」について、直近の調査では「子に頼りたい」とする人は37.5%に留まり、2010年調査時の53.4%から15.9ポイント減少しています。
対照的に「介護サービスなどの外部機関を利用したい」とする層は増加し、30.3%に達しています。このような背景には、世帯構成の変化があります。
厚生労働省『2023年国民生活基礎調査』では、65歳以上の世帯のうち「夫婦のみ」が32.1%、「単独世帯」が31.8%と高い割合を占める一方、「子と同居」は減少の一途をたどっています。親子がそれぞれ独立した存在という意識のなか、お互いに「頼らない/頼れない」という認識が強まっているといえます。
また、世帯構成の変化は実家の相続に対する意識にも影響を与えています。セコム株式会社が行った調査(2024年発表)では、「実家の空き家化が不安」という回答が全体の50.9%に達しました。離れて暮らしているからこそ、いざ実家を相続しても住むわけにはいかない。空き家放置への罰則が強化されるなか、実家の取り扱いはよりセンシティブな問題になっています。
人生の幕引きにおいて「子に迷惑をかけたくない」と願う親の決断は、一つの愛情の形です。
子はそれを拒絶と捉えず、まずは親が整えた「自立した老後」を尊重し、見守る。その姿勢こそが、新しい親孝行の形なのかもしれません。