(※写真はイメージです/PIXTA)
高齢層における「貯蓄の目的化」の実態
金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査 2025年』によると、金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)は、60代平均が2,683万円、70代平均が2,416万円です。一方で中央値は60代で1,400万円、70代で1,178万円となっています。高齢層は現役時代よりも貯蓄に励む傾向があるとともに、平均値と中央値が大きく乖離していることから、資産を持つ人と持たない人の二極化が進んでいることがうかがえます。
他の調査を見ていくと、高齢層の一部に「資産を生活のために使うのではなく、貯めること自体を楽しみとする」傾向が確認されます。ソニー生命保険株式会社『47都道府県別 生活意識調査(2025年11月版)』によると、現在の「生きがい」として「貯蓄・資産運用」を選択した回答者は全体で11.4%でした。さらに、同社の『シニアの生活意識調査』では、現在の楽しみとして「貯金」を挙げた割合は、60代・70代の男女ともに約10〜15%となっており、蓄財そのものが一種の自己充足的な活動として定着している実態が示されています。
貯蓄自体が目的化したとしても、それで本人が満足であれば、周囲が口を挟むことではありません。一方で、貯蓄を増やすこと自体が目的となると、子や孫の世代が最も資金を必要とする時期(住宅購入や教育資金など)に、資産を移転させることが困難になります。
つまり、多くの資産が「相続」という形で動くのは、所有者が亡くなった時点、すなわち子世代もすでに高齢期(50代〜60代)に入ってからのケースが一般的です。国税庁の統計等を見ても、生前贈与より相続による資産移転の規模が圧倒的に大きく、資金が最も有効に活用されるタイミングを逃す傾向があります。
このように貯蓄が自己目的化すると、資産は亡くなる瞬間に最大化し、最も資金を必要とする子世代への移転が遅れます。富が高齢層で停滞したまま「老後から老後へ」と引き継がれる流れは、次世代の自立や社会の活力を削ぐ大きな要因となっているのです。
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