IPO株への投資と「IPOディスカウント」の謎

木 本: ちょる子さんは、IPO(新規公開株)への応募などもされるんですか?
ちょる子: はい、銘柄によりますが、ネット証券や対面証券など複数のチャネルで申し込んでいます。ただ、抽選が中心ですので、基本的には「当たればラッキー」というスタンスですね。
木 本: 対面証券も活用されているのですね。
ちょる子: ええ。証券会社によって配分の仕組みや選定基準は異なりますが、それぞれのルールに沿って申し込んでいます。
木 本:IPOのプロセスで少し不思議なのが、「IPOディスカウント」という慣習です。本来1,000円の価値がある株を、あえて800円程度で売り出す。投資家からすれば「2割引きのチケット」を得るようなものですが、発行体(企業)側からすると、適正な企業価値が反映されにくい側面もあります。
ちょる子:それは最近、だいぶ是正されてきたと聞いています。以前はもっと極端で、「未公開株を買えれば初値で倍になる」といわれるような時期もありました。
木 本:なるほど。証券会社からすると、発行体である企業も大事なお客さまですが、株を買ってくれる投資家も同様に大事なお客さまです。そのため、どちらの利益も損なわないよう、そのバランスの中で価格が決まるという面もあるのでしょう。投資家としては、短期的な値上がりだけでなく、上場後も中長期的に成長してバリュー(企業価値)が向上していく姿こそが、本来あるべき理想の形だと思っています。短期的な売買を目的とする方は別として、会社が成長する過程でバリューが上がっていくことこそが、投資家にとっても企業にとっても健全な姿なのでしょう。
投資家へ「成長の蓋然性」をどう伝えるか

木 本: 新しく上場する会社にとって、「成長の蓋然性(がいぜんせい)」をどれだけ投資家に伝えられるかが勝負になるのかなと思います。
ちょる子:そうですね。上場直後はどうしても株価が乱高下しがちですが、その期間にどれだけこまめにIR活動(投資家向け広報)を行い、投資家と対話できるかが重要です。IPOが好きなトレーダーの中には、値動きの激しさを楽しむ層もいれば、小型株を長く持ちたいファン層もいます。そういった多様な投資家に対して、どう自社をPRしていくかが鍵になりますね。
木 本: そこで率直に伺いたいのですが、そもそも株式市場において、不動産株ってあまり人気がないですよね(笑)。その「劣勢」な状況下で、投資家はどういう不動産会社なら「一度見てみようか」となるのでしょうか。
不動産株をどう見る?「賃料収入」と「ストック型ビジネス」の強み

ちょる子: 私は不動産に対して、基本的にはポジティブに捉えています。今、建設業界は資材高騰や人件費の上昇に直面しています。そのコストを価格に転嫁できるのは、やはり需要の高い都心部に強みを持つ会社です。また、日銀の利上げが話題になっていますが、不動産は逆風と言われる一方で、「賃料」を収益源とするビジネスモデルであれば、賃料改定の交渉余地があるため、インフレや利上げ局面でも収益を維持・向上させやすい構造といえます。
木 本: なるほど。実態として何で稼いでいるかを見るわけですね。逆に「買取再販」に特化したモデルだと、景気後退局面(リーマンショックやコロナショックなど)で大きなダメージを受けやすく、PER(株価収益率)が7〜8倍と低く放置されがちです。それは「20〜30年に一度程度の深刻な景気後退局面で業績が大きく悪化するリスク」を市場が織り込んでいるからです。
ちょる子: そう思います。だからこそ、安定した賃料収入という後ろ盾がありつつ、長く持っていてもらえる。成長の蓋然性があれば、グロース株が好きな投資家も入ってきますし、収益基盤があればインカムゲインが好きな投資家もいらっしゃいます。
木 本: 一方で、安定したストック収入(管理料や賃料)が基盤にある会社なら、インカムゲインを重視する投資家からも支持されやすい。REITに近い安定感と、事業会社としての成長性を兼ね備えているのが、ひとつの理想形ですよね。
既存資産を蘇らせる「リブランディング」の価値

木 本: ちょる子さんは、実際に注目している不動産銘柄はありますか?
ちょる子: 私は「リアルゲイト」という会社の株式を保有しています。社長が一級建築士の方で、古いビルなどをリノベーションしてオフィスとして再生し、ストック型の収入を得るモデルです。
木 本: 建築コストが上がっている今、既存の建物の「再調達原価」も上がっています。つまり、古い建物を改築してアップデートすることには、これまで以上に大きな価値がある。その視点は非常に共感できます。実は私たちADIも、古い賃貸マンションを買い取り、単なるリフォームを超えて共用部を抜本的に変える「リブランディングビジネス」に注力しています。ゼロから建てるだけでなく、今ある資産を再生させることは、今後の大きなビジネスの柱になると見込んでいます。
ちょる子: そういった具体的な戦略や想いを聞けるだけでも、投資家としてはより理解が深まりますね。結局は、企業と投資家の「対話」が一番大切なんだと感じます。
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株式会社アーキテクト・ディベロッパー
代表取締役社長 木本 啓紀
ゴールドマン・サックス証券株式会社アジア・スペシャル・シチュエーションズ・グループに18年間在籍。ローン債権、債券、不動産、エクイティ、証券化商品、オルタナティブなどあらゆるプロダクトを対象とした投資業務を経験。その後、ソフトバンクグループ株式会社に転じ引き続き投資業務に従事。2019年9月 当社取締役に就任。その後、ソフトバンクグループを退職し、2021年9月 代表取締役CEOを経て、2025年7月代表取締役社長に就任、現在に至る。

ママ投資家
ちょる子氏
親の影響を受け、2011年に240万円から株主優待を目当てに株式投資をスタート。2019年から育児休暇をきっかけに、大型株のスキャルピングやスイングトレー ドを開始。 職場復帰後の2022年に資産1億円を達成。2024年には資産2億円を突破した30代の兼業投資家。育児に励む2児のママでもある。 育児と仕事、そして投資のバランスを取りながら、日々奮闘中。趣味は爆損芸。

