25%成長を「複利」で回し、3,000億円の利益を見据える

木 本:継続して経営して、正しい判断を積み重ねていく。そうすれば、長期的には日本を代表するような会社に十分なれるのではないか、というふうに思っています。
ちょる子:単純にこれも投資家としての性格なのですが、そうした長期的な成長を好む層も一定数存在します。自分でもじっくりと保有し、決算では必ず良いものが出てくるというのが分かっているから、そこまで待機できるわけですね。そうした長期的な視座に立った上で、改めて伺いたいのですが、今後、貴社としての具体的な構想についてお聞かせいただけますか。
木 本: 株式を公開するということは、「永続企業」になることが前提であると考えています。会社が組織として成熟し、株式を公開できる体制になったとき、競合を見渡せばその頂点には三井不動産や三菱地所、あるいは森ビルのような偉大な先達がいらっしゃいます。
そうしたなかで、先ほど申し上げた「10年で10倍を目指す」という成長曲線を、そのまま20年に伸ばせば、複利の計算上、現在の利益水準の80倍超という数字も見えてきます。これは決して不可能ではないと考えており、長期的には日本を代表するような会社に十分なれるのではないかと。一足飛びに達成しなくても、年率25%の成長を反復継続的に繰り返していく。現在の約44億円の経常利益が80数倍になれば約3,000億円。それはまさに、三井不動産さんの利益水準に匹敵します。
今週、チャーリー・マンガー(※著名投資家)の本を読み返しました。「焦るな、じっくりやれ」と。もちろん、私自身に彼らのような賢さがなかったとしても、彼らは決して短期的な利得を求めるような強欲な振る舞いはしません。
そうした姿勢で経営を継続し、正しい判断を積み重ねていく。そうすることで、振り返ったときに「これほどの高みまで来た」と実感できるのではないかと思っています。
ちょる子: 社長のお話を伺っていると、ファンが増えそうですね。そつがない、非常にフラットな印象です。お話を伺っていると、社長の誠実なお人柄が伝わってきます。
木 本: それも、最初の仕事(外資系金融)で鍛えられたといいますか。不良債権などの案件は、結局「塊」で来るんですよね。その事実を紐解いて、ファクトを徹底的に整理し、コモンセンス(常識)に照らして「こちらの選択より、こちらのほうが合理的である」という判断を積み上げていく。これは非常に地味な仕事の集積です。
今の経営やカルチャーにおいても、目の前の課題を要素分解し、理論化して実行に移す。このプロセスをフラットに継続できれば、少なくともこれまでの成長は達成できていますし、ここから先も可能であると考えています。
ちょる子:楽しみにしています。
木 本: ありがとうございます。ただ、こうして長期的な目線できちんと経営していくことが大切だ、ということになると、今度は株を買っていただいた投資家の方々が、なかなか手放さなくなる懸念もあります。
株の「流動性」と「長期保有」の両立をどう図るか

木 本:株を持っていて、ずっと持っていよう(長期保有しよう)となると、今度は流動性が落ちてしまいますよね。その流動性と「長く持ってください」というメッセージの共存を、どうやって図っていけばいいのでしょうか。
ちょる子:ある程度株価が上がったときに、分割していくしかないのかなとは思いますね。
木 本:分割によって流動性は出ますか。
ちょる子:出ます。投資家目線で言えば、板のスプレッドが広く開いている状態は買いづらく、売りづらい。そうなると、上場した際にいくらぐらいの価格がつくかは分かりませんが、やはり機関投資家が参入しにくくなってしまいます。流動性がないということは、デイリーの出来高に制限がかかり、何日分しか買えないといった課題が出てきますよね。浮動株比率などのルールは、さらに厳しい話ですから。
木 本:そうですよね。でも、世の中に知られていても「買えない会社」というのは、実際に存在します。
ちょる子: はい、ありますね。それはもう、取り組んでいる「競技」が違うのだと感じます。決算は3ヵ月に1回ですが、その間の期間に会社の価値が変わるわけではありません。価値は変わらないけれど、株価は毎日動く。それがそもそも気持ち悪いから、そのリスクを排除するために、あえて薄い板だけでやりたいという投資家もいらっしゃるんですよ。むしろ動かないほうがいい、と。決算では必ず良いものが出てくるのが分かっているから、そこまで待機してじわじわ集めていく。結局それは、決算のときに大きな成果(花)として結実するんです。
木 本:流動性が低いからこそ、良いニュースで買いが入るとグッと株価が上がりますしね。仮に経常利益が連結で100億円、時価総額1,000億円前後の会社があったとして、どれぐらい持ち株を売却したほうが良いと思われますか。
ちょる子: 基本は売らないほうが印象が良いですよ。ミニマムであるべきです。「この会社はまだまだ上を目指せるのだから、売るわけがない」と思わせてほしい。社長が株を売るということは、何を言っても投資家は将来性を見限っているのではないかと感じてしまいます。
「創業者は売らない」という信頼

木 本: もう一つの質問は、仮に35%売却したとします。残りの保有株を担保にお金を借りるというケースも多いですが、これは投資家から見てどう映りますか。
ちょる子: それは社長のお人柄をどう評価するか、という一点に尽きる気がします。
木 本: やはり、あまり良いサインではないのですね。
ちょる子:「そんなにお金を使うのか」という懸念に繋がりますから。
木 本:ただ、20代から起業し、上場を機に資産を現金化して消費に充てるというのは、マネーマネジメントの観点から無理もない面はあると思います。しかし私はもともと外資系金融の出身ですから、普通の創業者に比べるとあまりそうした消費欲はないのではないかと。
ちょる子:社長がこれだけ「リスクを排除したい」と言っているなかで、株を担保に入れてデフォルトのリスクを負うようなことになれば、信頼に関わりますよね。
木 本: ちなみに、「ロングターム・グリーディー(Long-term Greedy)」という言葉があります。本当の強欲なやつというのは、長い目線で強欲なんだ、という教えです。 私もその考え方で育っています。野心が大きいからこそ、その実現には相応の時間がかかることを理解している。
ちょる子: 自分の実現したい目標のためにリスクを排除し、アップセルを狙っていく姿勢ですね。
木 本: 最後に配当の考え方についてです。「配当性向」という指標もありますが、デベロッパーは業績に波があるため、必ずしも安定的な還元に適しているとは言えません。そこで我々は、「DOE(自己資本配当率)」という指標を重視したいと考えています。
ちょる子: DOE、良いと思います。
木 本: 我々も、DOEという指標がコンフォタブルです。ストックビジネスもあり安定していますから。また、私たちが提供している鉄骨アパートの利回りはおおよそ5%水準です。投資家の皆様から資本をお預かりしている以上、DOE5%程度を目標に据えることが、経営としての誠実な姿勢ではないかと考えています。5%を切るなら、その資本で5%の不動産を買っておけばいいということになってしまいます。DOE5%というのは、投資家から見ればかなり魅力的な水準ではないですか。
ちょる子: ちょい高だと思います。今の御社のお話を伺う限りだと、普通に大きなキャピタルゲインも狙えそうな気がしますけれど。
木 本: 頑張りたいですね。我々の一番のお客様であるオーナー様のなかにも、「上場したら株を持たせてよ」とお声がけくださる方がいます。そうした期待に応えられるよう、準備を進めてまいります。

株式会社アーキテクト・ディベロッパー
代表取締役社長 木本 啓紀
ゴールドマン・サックス証券株式会社アジア・スペシャル・シチュエーションズ・グループに18年間在籍。ローン債権、債券、不動産、エクイティ、証券化商品、オルタナティブなどあらゆるプロダクトを対象とした投資業務を経験。その後、ソフトバンクグループ株式会社に転じ引き続き投資業務に従事。2019年9月 当社取締役に就任。その後、ソフトバンクグループを退職し、2021年9月 代表取締役CEOを経て、2025年7月代表取締役社長に就任、現在に至る。

ママ投資家
ちょる子氏
親の影響を受け、2011年に240万円から株主優待を目当てに株式投資をスタート。2019年から育児休暇をきっかけに、大型株のスキャルピングやスイングトレードを開始。 職場復帰後の2022年に資産1億円を達成。2024年には資産2億円を突破した30代の兼業投資家。育児に励む2児のママでもある。 育児と仕事、そして投資のバランスを取りながら、日々奮闘中。趣味は爆損芸。

