インフレと人手不足が常態化するなか、不動産ビジネスの主戦場は「開発」から、DXと資本効率が問われる「管理の集約」へと移りつつあります。株式会社アーキテクト・ディベロッパー代表取締役社長の木本啓紀氏と、資産3億円を築いたママ投資家・ちょる子氏が特別対談で再び激論を交わしました。金融界の最前線から住宅実業へと身を投じた木本氏が解き明かすのは、450億円規模の組織を「複利25%」で回し、10年で10倍の成長を目指す、グロース戦略。IT投資のコストに耐えられない小規模事業者の淘汰が進む中、なぜADIは「管理業界の寡占化」を必然と断言するのか。上場というレバレッジを活用したM&Aの展望から、合理性の極致として辿り着いた「管理される邸宅」という次世代住宅の青写真まで。プロの投資家をも唸らせる、金融の合理性と住まいへの情熱が融合した「次世代ディベロッパー」の野心的なグランドデザインに迫ります。

25%成長を「複利」で回し、10年で10倍を目指す

木 本今後のマーケットを展望すると、管理の業界において、ものすごい寡占化が進むと考えています。

 

ちょる子その発想の根底には、木本社長が金融畑のご出身であるという強みを非常に強く感じます。

 

木 本昨年度、我々の経常利益成長率は25%でした。その前年は300%ほどでしたが、それは母体が小さかったためです。市場において一定の規模となった今、25%程度の成長を継続していく。これは、爆発的な急成長を売りにするベンチャー企業などと比較すれば、一見、味気なく映る数字かもしれません。しかし、10年というスパンで「複利」で増やしていけば、資産規模は10倍近くなります。不動産は、それが可能な業界なのです。現在450億円規模の我々が、10年で10倍前後になる。これは射程圏内であると考えています。この巨大な建築不動産マーケットにおいて、我々はまだ決して「大きな魚」ではありません。グロース企業としてカテゴライズしていただくことは、十分に可能だと考えています。

 

ちょる子できることなら、株価があまり高く寄りすぎないほうが、長期的には綺麗な成長曲線を描ける気がします。ダウンサイドリスクを抑えつつ、それだけのアップサイドがあるのは、非常に夢のあるお話です。PERなどの評価がつくのは、最近ではAIや半導体素材など、マクロ環境のイメージから資金が流入しやすい領域で目立ちます。一方で不動産も「利上げ」というテーマが定期的にホットトピックになります。そのタイミングで正しく仕掛け、注目を集めることができれば、ADIの価値は投資家にも確実に伝わるはずです。今のお話を伺う限り、正しく理解されれば、「魅力的な選択肢の一つ」として、多くの投資家の関心を引くことになるのではないでしょうか。

上場をレバレッジとしたM&A戦略と「流動性」の担保

木 本一方で、我々はこれまで非常に“しっとりとした地味な会社”で、認知度も決して高くはありませんでした。今後、パブリックカンパニーとしてコミュニケーションを加速させるにあたり、まず何から着手すべきでしょうか?

 

ちょる子それは、何を達成したいかによります。株価を適正に引き上げたいのであれば投資家との対話ですが、株価を気にしすぎると経営判断がおかしくなります。やはり、投資家と信頼関係を築きながら、実直に経営を遂行していくことに尽きると考えます。ただ、上場するということは、パブリックマーケットからキャピタルを調達できるのが最大の魅力ですし、そうでなければ上場する意義そのものが問われてしまいます。上場しながら一度も公募増資を行わない会社も多いですが、それでは勿体ない。

 

木 本そうした意味では、適正な時価総額をつけてエクイティストーリーを描き、他社と統合していく。株式交換という手法も極めて重要です。特に今、時価総額100億円未満の小規模な会社が退場していくフェーズにあります。会社を売却するケースもありますが、上場を維持し、株主に流動性を提供してきた自負がある経営者にとって、非公開化には強い抵抗感があるものです。その際、我々が上場していれば、株式交換という形で、別の「上場株」として継続保有できる選択肢を提供できます。こうしたスキームによるM&Aは今後増えていくと考えており、そのためにも我々が上場している意義があると考えています。

 

ちょる子現時点で、すでにM&Aも本格的に視野に入れていらっしゃるのですか?

 

 

深刻化する「事業承継問題」を解決し、業界を再編する

木 本買い手の立場としては毎年数社を買収しています。不動産管理の領域では、今、非常に深刻な事業承継の問題が起きています。かつてはどこの駅前にも地元の不動産屋があり、賃貸仲介から周辺アパートの管理までを一手に引き受けていました。しかし現在、深刻な人手不足に加え、システム投資への対応が必須となっています。電子契約の導入もそうですし、そもそも集客の95%以上はネット経由です。店頭の貼り紙を見て来店する顧客の流れは、もはや5%以下でしょう。こうした環境下で、地元に根ざした高齢の経営者の方々は、ご自身のお子さんにこの苦労を継がせたくないと考えるようになっています。

 

ちょる子お子さんに、もっと自由に生きてほしいという想いですね。

 

木 本はい。「自分は自分の代でいい人生だった。子どもはもっと自由なことをやればいい」と考える方が多いため、売却案件は非常に増えています。さらに最近では、上場会社から管理事業を譲り受けるケースが出てきました。管理戸数が3,000〜4,000戸程度の規模では、DXやIT投資のコストに耐えられないからです。

 

ちょる子規模のメリットが出せないと、IT投資の重みに耐えられなくなるのですね。

 

木 本自社開発による「ナチュラルグロース」と「M&Aによる成長」。この両輪で管理戸数を拡大していく方針です。

 

ちょる子非常に合理的な戦略ですね。5万戸を超える管理はIT投資なくして不可能ですし、買収によって利益体質はさらに向上していくはずです。

 

木 本管理事業は、その収益の多くが直接利益に寄与します。もちろん相応の労務負担は伴いますが、投資家目線で言えば、これまで極めて断片化されていた管理業界は、10年を待たずして一気に寡占化が進むと考えています。効率的なインフラと明確な経営思想があれば、その中で確実に勝ち残っていける。これが我々の描く成長のリアリティです。

 

「グローバルスタンダードな住宅」への純粋な情熱

ちょる子非常に面白いです。一連のお話を伺っていると、やはり発想の原点が金融にあり、緻密で隙がありません。

 

木 本不動産ビジネスにおいて、金融の視点は欠かせません。数億円の物件を融資(ローン)なしで購入する方はまずいませんから、「不動産を動かすことは、お金(金融)を動かすこと」と同義なのです。その意味で、私自身の金融界でのキャリアは、今のビジネスを構築する上で大きなアドバンテージになっています。ただ、私がこの事業に身を投じている本当の理由は、単なる数字の計算ではなく、「住宅という仕事そのものへの憧れ」にあります。人は人生の多くの時間を家で過ごします。どのような家で、どのような家族の時間を刻むか。その体験は、個人の人生において何物にも代えがたい価値を持ちます。その舞台を作る仕事に携われるのは、私にとって非常に幸福なことなのです。

 

ちょる子ゴールドマン・サックスやソフトバンクでのキャリアを経て、なぜ「住宅」なのでしょうか。

 

木 本40代半ばで「本当にやりたいこと」を自問した際、住宅やインテリアに深く関わる仕事をしたいと強く思いました。金融的な合理性で徹底的にビジネスを構築しながらも、もう一方で「理想の住宅」を追求したい。特に、今後は戸建て住宅に注力したいと考えています。

 

ちょる子戸建て、ですか。

 

木 本世界的に見て、かつて広大な邸宅があった土地が、分譲のために4分割、ひどい場合は8分割に細分化されてしまう現状があります。私はそれを良しとせず、大きな土地を一括で購入し、ディベロッパーとしてグローバルスタンダードに照らした、真に価値のある邸宅を建売として提供したいと考えています。日本の戸建ては個性が強すぎて中古市場での価値が下落しやすい傾向にありますが、プロの視点で資産価値を維持できる絵を描き、提供していきます。

 

ちょる子非常に共感します。実は私も土地を買い取ってレジデンスを建てようとしているのですが、1年早く木本社長にお会いしたかったです(笑)。

 

木 本細分化されるのはやめてほしいですね。人が生活し、思い出を育む場所として、ふさわしい住環境を残したいのです。

現代人のライフスタイルに最適化した「管理される邸宅」

木 本150坪程度の広さがあれば、庭などの外構まで徹底的に作り込むことが可能です。東京の交通網は発達しており、車で30〜40分程度の郊外であれば、生活のリズムを崩さずに豊かな住環境を享受できます。さらに重要なのが「メンテナンス」です。我々は管理のプロとして、戸建てであっても鍵をお預かりし、あらゆるケアを代行するサービスを構想しています。たとえば、洗濯機が壊れただけで、修理のために半日拘束されるのは現代のライフスタイルには合いません。

 

ちょる子たしかに。戸建ての「すべて自己責任」という負担は、現代人には重いという考え方ですね。

 

木 本マンションのような管理機能を戸建てに持たせることで、精神的な負荷を軽減し、15年後、20年後も高い資産価値を維持することを目指した設計・管理体制を備えた家を提供する。これが我々の挑戦です。

 

ちょる子完成が待ち遠しいですね。

 

木 本ぜひ、ご購入を検討してください(笑)。最近は金融機関も、高価格帯の住宅向けに数億円単位のローンを提供するトレンドがあります。住宅を軸に、「ビジネスとしての強靭さ」と「住まいとしての美しさ」の両輪を回す――そうでなければ、会社も従業員も面白くないですから。

 

ちょる子合理的な経営判断を積み重ねていけば、日本を代表する企業になれると確信しました。

 

木 本ありがとうございます。こうした世界観を共有できる方々に、長く支持される企業でありたいと考えています。

 

 

株式会社アーキテクト・ディベロッパー

代表取締役社長 木本 啓紀

ゴールドマン・サックス証券株式会社アジア・スペシャル・シチュエーションズ・グループに18年間在籍。ローン債権、債券、不動産、エクイティ、証券化商品、オルタナティブなどあらゆるプロダクトを対象とした投資業務を経験。その後、ソフトバンクグループ株式会社に転じ引き続き投資業務に従事。2019年9月 当社取締役に就任。その後、ソフトバンクグループを退職し、2021年9月 代表取締役CEOを経て、2025年7月代表取締役社長に就任、現在に至る。

X: https://x.com/kimoto_adi 

note: https://note.com/adi_hirokikimoto

 

ママ投資家

ちょる子氏

親の影響を受け、2011年に240万円から株主優待を目当てに株式投資をスタート。2019年から育児休暇をきっかけに、大型株のスキャルピングやスイングトレードを開始。 職場復帰後の2022年に資産1億円を達成。2024年には資産2億円を突破した30代の兼業投資家。育児に励む2児のママでもある。 育児と仕事、そして投資のバランスを取りながら、日々奮闘中。趣味は爆損芸。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄や投資手法を推奨するものではありません。
※株式投資には価格変動リスク等があり、元本割れとなる可能性があります。
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※記事内の見解は対談時点のものであり、将来の業績や株価動向を保証するものではありません。
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