M&Aの具体的な流れ、オーナーの意向を汲む「丁寧な切り分け」

佐 藤: 弊社のM&Aの進め方について、骨格となる流れをご説明します。弊社では、M&Aの仲介会社様からご紹介いただくことが多いです。常にコミュニケーションを取らせていただいているのは10社ほどになります。
日々ご紹介いただくなかで、弊社のM&A対象となり得る可能性のある企業様には、一度お会いするというのがスタンスとしてございます。経営者の方のお考えがマッチするかという点は、必ずお会いして確認させていただきます。
その後、初期的な資料をいただき、株価や対価の試算をします。大抵のケースでは、その時点で仲介会社様とオーナー様の間で希望の譲渡価格が話し合われており、そちらに見合うように弊社でも頑張らせていただく形になります。
初期的な検討のあとに「意向表明書」を提出し、売主様にご承諾をいただいたあとに、本格的なデューデリジェンス(買収監査)を行います。こちらが約1〜2ヵ月ほど。ここで出た様々な論点を、最終契約である「株式譲渡契約」や「吸収分割契約」に盛り込み、事業を譲り受けるという流れです。
期間としては、最初の面談から意向表明の提出までが約1ヵ月。意向表明の応諾から事業譲受までは、M&Aの類型にもよりますが2ヵ月ほど。弊社の場合は、トータルで3ヵ月くらいになることが多いのではないかと思います。
木 本:特定のプレファレンス(優先順位)はないのですが、規模はそれほど大きくない地場の会社さんも、事業を丁寧に切り分けて対応することを大切にしています。
オーナーさんも、やはり継続したい事業があるケースもあるんですよね。「管理は引き渡したいけれど、自分が所有している物件の持ち分は継続したい」といったご要望にも丁寧に対応しています。
大手の外資系投資家などだと、そこまで丁寧にやる余裕はないと思うんです。数億円、1桁億円の買収で「会社分割」まで行うのは、弁護士費用なども含めてかなりの負担になりますから。そこを私たちはかなりプラクティカルに、「ここのリスクだけ抑えておけばいいよね」という形で会社分割などに対応できる。これは結構、弊社の競争力になっているのではないかなと思います。
買収資金の考え方と、従業員への説明タイミング

佐 藤:買収資金については、基本的には自己資金で進めてきてはおりますが、やはり金融機関様のご支援も多くいただいておりますので、並行して資金調達のほうも相談しているような形になります。
木 本:従業員への説明タイミングは非常に重要です。M&Aは秘匿性の高い取引なので、取引が完結するまで関係者には言えません。その関係者の中には従業員も含まれますので、あくまで買収がほぼ完結した、あるいは完結した直後にお話をするということになります。
佐 藤:M&Aによって、従業員の方がやれることの範囲が広がったというのは一番大きいかもしれません。積極的に活動されている従業員の方が、オーナーさんに提案したいけれど自社ではできなかったことが、ADIの傘下に入ることで「開発機能」や「修繕機能」を使えるようになります。自分が考えた通りに提案できるということで、のびのびとお仕事をされているのではないかなというのは、私も感じます。
「屋号」を変えない理由と、地域との関係性

木 本:統合にあたって、あえて変えないこともあります。私たちが譲り受ける事業は、場合によっては50年ぐらいの業歴があります。不動産はほとんどの人にとって最大の資産ですから、それを動かす時の「信用」や「信頼関係」はめちゃくちゃ大きい。そこを承継させてもらえるのがM&Aの最大の魅力です。
その会社が地域の祭りなどに参加しているのであれば、引き続き参加させていただく。地域に根差した会社であり続けること自体が「価値そのもの」なので、それを活かすのはすごく大事なことだと考えています。
事業譲渡の場合は法人を引き継がないのでADIの名前に変わりますが、一方で株式譲渡で買った会社については、1回も社名変更をしたことがありません。これまでお付き合いのあったオーナーさんから見ると、親しみもあるのではないかというところで、変えてこなかった経緯があります。
佐 藤:2022年からM&Aを始めて、当初は屋号を統一していこうという話もありました。ただ、規模が大きくなるなかで、逆にその屋号が地場でのブランドとなっていて、オーナーさんの安心感に繋がっている面もあります。ケースバイケースで、売主さんと協議しながら進めています。
理想的なグループ統合と今後の展望

佐 藤:事業承継したあとに、いかにお客さんとの関係性を構築できるかを重視しています。なかには資本関係が変わったことをご存じない方もいらっしゃいます。ご説明したうえで、あえてそのまま屋号の名前でご連絡をいただく形にしていることもあります。
グループ入りしたあとは、弊社の従業員も出向などを通じてオーナーさんとの接点を持つようになるので、そこで徐々に「アーキテクト・ディベロッパー」という名前が浸透していけばいいなと考えています。
木 本:将来から振り返ると、今の案件はまだ「最初のほうの案件」になるのだと思います。今後、私たちの社名ブランドなのか、あるいは「ADIの事業承継スキーム」というビジネスブランドなのかはわかりませんが、理想の世界としては、「ADIに事業を譲れば安心だ」という下地ができつつあるのかなと思います。
佐 藤:会社さんによっては「オーナー担当制」を敷いているところもあります。弊社はシステムで管理体制を整えていますが、急に担当が変わる不安を感じるお客様には、あえて担当者を残すなどの対応もケースバイケースで行っています。
地方エリア進出への責任と、ADIが考えるM&A

木 本:特定のエリアで非常にドミナントな会社さんもあり、検討はしていきたいのですが、1都3県以外は人口が流出している地域も多い。不動産管理業にとって人口はマーケットそのものです。インフラを提供している以上、引き受けたエリアに対しては大きな責任が生じます。「地方の管理会社を買ってうまくいかなかったから撤退しよう」ということはできないし、すべきではない。だからこそ、慎重になる気持ちは強く持っています。
佐 藤:M&Aは、引き継いだ企業だけでなく、従業員、お客様、そして地域と共に成長していくこと。単純に会社を買収するだけでなく、その関係性を引き継いでいくことを意識して、今後も進めていきたいと考えています。
グループに入っていただいた会社さんのご紹介で、同様に事業承継を検討されている方からご相談をいただくケースも増えています。事業承継をお考えの方がいらっしゃれば、お気軽にご相談いただければと思います。
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株式会社アーキテクト・ディベロッパー
代表取締役社長 木本 啓紀
ゴールドマン・サックス証券株式会社アジア・スペシャル・シチュエーションズ・グループに18年間在籍。ローン債権、債券、不動産、エクイティ、証券化商品、オルタナティブなどあらゆるプロダクトを対象とした投資業務を経験。その後、ソフトバンクグループ株式会社に転じ引き続き投資業務に従事。2019年9月 当社取締役に就任。その後、ソフトバンクグループを退職し、2021年9月 代表取締役CEOを経て、2025年7月代表取締役社長に就任、現在に至る。

