(※写真はイメージです/PIXTA)
「子育て、やめてなかったよね…」息子の一言に、母の反応は
そして、大学進学を機に一人暮らしを始めたリュウセイさん。周囲の友人たちが「自炊ができない」「洗濯機を回していなくて明日着る服がない」と家事に苦戦するなか、自分だけは慣れた手つきで自立した生活をすることができています。
スーパーの底値がわかり、高いと感じたら少し遠くのスーパーまで自転車でハシゴ。眠くて時間のないときも、冷蔵庫の余り物でパパッと自炊ができ、その分生活費が抑えられ、友達と遊びに行く余裕があります。周囲のように「金がない」と悩むこともありません。そんな自分の高い「生活力」に気づいたときはじめて、理不尽に思えた母の「子育て卒業宣言」が、自分への最大の教育だったのだと悟りました。
そんなリュウセイさんもこの春、無事に大企業からの内定をもらい、大学を卒業します。春休みで実家に帰省したリュウセイさんは、食卓を囲んだあと照れくさそうに、母の背中に声をかけました。
「……あのさ」
聞こえていないのでしょうか。母はこちらを向くこともなく、リビングには沈黙の時間が流れます。
「俺、気づいてたよ。ごはん炊いてくれてたことも、冷蔵庫の中身切らさないように買い物行ってくれてたことも。部活の大会、こっそり見に来てくれてたことも。……俺、最初まじでびっくりして絶望したけどさ。子育て、別にやめてなかったよね」
勇気を出して話しているのに反応がなく、リュウセイさんがたまらず顔を上げると、母の背中が少しだけ震えているのがわかりました。
「家事してて思ったよ。働きながら、これ1人で3人分やんの、超~キツかっただろうなって。父さんもあんな感じで、頼りにならなかっただろうしさ。まじでありがとう。おかげで、ちゃんとした大人になれました。まあ……まだまだかもしんないけど(笑)」
母はなにもいわず洗面所に向かうと、タオルでそっと目元を押さえました。
働く女性を追い詰める“二重の負担”
近年、女性の社会進出を背景に、共働き世帯が増えています。共働き世帯の数は専業主婦世帯の約3倍に達していますが、その一方で家庭内の負担は依然として女性に大きく偏ったままです。
総務省「社会生活基本調査(令和3年)」によると、共働き世帯における1日あたりの家事・育児関連時間は夫が「約1時間10分」であるのに対し、妻は「約4時間10分」と、3倍以上の開きがあります。フルタイムで会社員として8時間働き、クタクタになって帰宅したあとに、今度は「家事・育児」という無給の第2のシフト(セカンドシフト)が待っている――。この二重の負担は、女性の体力と精神力を確実に削り取っていきます。
「母としての役割」に押しつぶされ、苦しさを抱えている人は少なくないでしょう。そんなとき、「やらないこと」や「手放すこと」が、最善の選択肢となることもあるのかもしれません。