「葬儀は身内だけでしめやかに」という選択が、今や主流となりました。しかし、親の遺志を尊重し、負担を減らそうとするこの判断が予期せぬ結果を生むこともあります。ある男性のケースを見ていきましょう。
家族葬でいい…〈月収42万円・57歳長男〉、88歳母の願いを叶えただけなのに、葬儀後に漏らした「浅はかでした」という猛省の理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

「家族葬」の満足度と、事後に発生する「想定外の負担」

葬儀の形式が多様化するなかで、皮肉にも「残された子の負担」は別の形で膨らんでいます。

 

鎌倉新書『第6回お葬式に関する全国調査(2024年発表)』によると、実施された葬儀の種類で「家族葬」を選択した割合は50.0%と、一般葬(30.1%)を大きく上回っています。しかし、その満足度の裏側で、見落とされがちなリスクが公的なデータからも浮かび上がっています。

 

国民生活センターや全国の消費生活センターには、年間約600件~800件前後の葬儀サービスに関する相談が寄せられています。その多くは価格や契約に関するものですが、相談の背景を詳しく見ると「家族葬にしたいと伝えたが、親族の反対で揉めている」「親戚から葬儀のやり方に苦情を言われた」といった、形式の選択に起因する人間関係のトラブルが根深く存在しています。

 

ここから浮かび上がるのは、家族葬を選んだ遺族が陥る落とし穴。

 

■後から知らされた人たちの不満

親の死を後から知った知人や親族は、「なぜ最後に一目会わせてくれなかったのか」とショックを受けます。これが単なる愚痴で済めばよいのですが、最悪の場合、その後の親戚付き合いにヒビが入ったり、法事への協力を拒まれたりといった実害に発展しかねません。

 

■バラバラにやってくる弔問客への対応

本来、葬儀は決まった時間に大勢を一度に迎えることで、区切りをつける役割があります。それをしなかったために、来客が何週間も分散して自宅を訪れることになります。遺族は、せっかくの休日を「見知らぬ人への接待」に奪われ続けることになるのです。

 

■香典返しの手間と費用の増大

葬儀の場でまとめて返礼品を渡せば安く済むことも多いですが、後から届く香典に対しては、その都度個別に品物を選び、発送の手配をしなければなりません。一件ごとに送料がかかり、結局は「安く済ませたはずの葬儀代」が、こうした雑費で削られていきます。

 

親が口にする「派手にしないで」「身内だけで」という言葉は、子どもに負担をかけたくないという親心でしょう。しかし、その言葉をそのまま実行することが、かえって子どもを忙殺させてしまうことも考えられます。

 

このような後悔を防ぐためには、葬儀を決める際、参列しなかった人たちにどう報告し、どう個別対応するかまでをセットで考えておく必要があるのです。