夫婦で穏やかな老後を過ごすため、周到に準備を重ねてきたはずが、予期せぬ事態で生活の基盤が揺らぐケースが後を絶ちません。特に共働きでキャリアを築いてきた世帯ほど、現在の社会保障制度が抱える思わぬ「落とし穴」に直面するリスクがあります。ある夫婦のケースを見ていきます。
やってられません!年金月16万円・75歳妻、「働き損」に激怒。夫急逝で遺族年金「まさかのゼロ円」、高級老人ホーム退居の危機 (※写真はイメージです/PIXTA)

「共働き損」を加速させる遺族年金の欠陥

遺族厚生年金の受給額は、原則として亡くなった配偶者の報酬比例部分の4分の3とされています。

 

しかし、自身も厚生年金を受給している場合、まず「自身の老齢厚生年金」が全額支給され、遺族厚生年金がそれを上回る場合の「差額分」のみが加算される仕組み(充当方式)となっています。つまり、「自分の年金額 > 夫の年金額の4分の3」であれば、遺族厚生年金は実質ゼロとなるのです。

 

さらに、住まいのコストも重くのしかかります。株式会社LIFULL senior/LIFULL 介護の調査によると、1都3県の有料老人ホーム費用相場は、東京都で入居時費用相場が1,008万円、月額費用相場が29.9万円に上ります。

 

これは神奈川県の約1.4倍(差額:288万円)、千葉県の約2.1倍(差額:538万円)、埼玉県との比較では約3.2倍(差額:688万円)です。有料老人ホームの費用は不動産相場に強く影響を受けるため、都心部ほど高額になる傾向があります。

 

生活費が「1人分=2人分の半分」にならないのと同様に、老人ホームの管理費や賃料も、人数が減ったからといって単純に半額にはなりません。そのため高橋さんのように、パートナーの死で世帯収入が激減したとき、一気に費用面での懸念が噴出するのです。

 

「夫婦合算の世帯年収」を前提にライフプランを立てている共働き世帯ほど、片方を失った際の収入減がダイレクトに生活を直撃します。現行の社会保障制度は、いまだに「専業主婦世帯」をモデルとした設計の名残が強く、自立して働いてきた女性ほど、いざという時の保障が薄くなるというパラドックスを抱えています。

 

老後資金のシミュレーションを行う際は、「どちらか1人の年金と貯蓄だけで、施設費用を維持できるか」という、シビアな前提に立つ必要があるのです。

 

[参考資料]

株式会社LIFULL senior/LIFULL 介護『東京都内有料老人ホームの入居時費用相場は1,000万円超。都内在住者の問い合わせの4割強が都外施設へ。』