定年退職は、長年築いた立場を失う大きな節目です。特に重責を担った層ほど、現役時代の意識が再雇用後の壁となり、組織内で孤立するケースが少なくありません。定年後の再雇用において、いかにして新たな役割を見出すべきか。ある男性のケースを見ていきます。
まさか、何かの間違いだろ?「年収1,200万円」だった60歳元部長の転落劇。再雇用で「月収28万円」の雑用係に転落したプライドの末路 (※写真はイメージです/PIXTA)

定年→再雇用サラリーマン、成功の秘訣

株式会社パーソル総合研究所『企業の60代社員の活用施策に関する調査』によれば、企業の約4割(38.1%)が50~60代の人材に対して「過剰感」を感じているという実態が明らかになっています。この「過剰感」を生んでいる正体は、田中さんが当初陥っていた「現役時代の意識」と「現場が求める役割」の大きなズレです。

 

「戦力」としての期待値のズレ

同調査では、60代社員の活躍を阻む要因として「役割が不明確」「本人のモチベーションの低さ」などが挙げられています。企業側がシニアに「現役並みの成果」を期待しにくくなっている一方で、本人が過去の成功体験に固執することが、周囲の「使いにくさ」を助長しています。

 

「上司のやりにくさ」という障壁

独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)の「高年齢者の雇用に関する調査」によれば、継続雇用における課題として「高齢者の配置・仕事の割り当て」を挙げる企業が多くなっています。特に「元上司」への指示系統に苦慮する現場の声が反映されています。

 

意識のソフトランディング

内閣府の「高齢者の就業に関する調査」等でも示されるように、再雇用後の仕事満足度は、賃金水準だけでなく「自分の能力や経験が活かされている実感」に左右されます。田中さんのように、直接的な「指揮」から、間接的な「支援」へと役割を再定義できた人ほど、精神的な安定を得やすい傾向にあります。

 

田中さんのように、再雇用において重要なのは、過去の役職や年収に固執せず、現在の組織が求める役割に自分を適応させることです。指揮官から支援者へと自身の機能を切り替えることが、定年後の安定した職業生活を維持するための現実的な条件といえそうです。

 

[参考資料]

株式会社パーソル総合研究所『「企業の60代社員の活用施策に関する調査」を発表 約4割の企業が50~60代人材に過剰感』