人生の折り返し地点とも言える40代。一定のキャリアを築き、人並みの幸福を手に入れたはずのビジネスパーソンが、ふとした瞬間に深い虚無感に襲われることがあります。ある男性の葛藤を通じて、現代のミドル世代を取り巻く厳しい現実を見ていきます。
俺、何のために働いているんだろう…。「年収880万円・46歳課長」の悲鳴。毎朝7時30分の通勤電車で感じる、静かなる絶望 (※写真はイメージです/PIXTA)

40代を襲う「ミッドライフ・クライシス」の正体

内閣府『満足度・生活の質に関する調査(令和5年度版)』によると、総合主観的満足度を年齢別に見た場合、10代後半から30代までは比較的高く、40代から50代にかけて底を打ち、60代以降に再び上昇するという「U字型」の曲線を描いています。特に40代は「家計の状況」や「精神的ゆとり」の項目において、全世代で最も低い満足度を記録しています。

 

また、Job総研(パーソルキャリア株式会社)による『2024年 転職条件の実態調査』では、転職先に「ゆるさ」を求める割合が40代で89.6%と、全年代で最も高くなっています。特筆すべきはその理由です。

 

転職先に「ゆるさ」を求める層の多くが「プレッシャーやストレスの軽減」を挙げる一方で、自由記述では「転職で必ずしも給料が上がるわけではない」「給与への期待は高く持たず、ゆるく働けるほうを選ぶ」といった、ある種の悟りに近い意見が目立ちます。

 

かつては「働けば働くほど豊かになれる」という上昇気流のなかにいた40代ですが、現在は「働いても手取りは増えず、責任とストレスだけが積み上がる」という現実に直面しています。佐藤さんのように年収800万円を超えていても、その実態が「家族への送金」に特化した生活であれば、仕事への情熱を維持するのは困難です。

 

従来の日本型雇用であれば、40代は「さらに上を目指す」時期でした。しかし現在、多くのミドル層は「どれだけ頑張ってもこれ以上は望めない」というキャリアプラトー(停滞状態)に陥っています。会社からは「家族を支える大黒柱」としての献身を求められ、家庭からは「安定した収入源」であることを期待される。その一方で、本人の「自己実現」や「新しい挑戦」は、リスク回避のために後回しにされてきました。

 

「家族のため」という目的が唯一の動機になったとき、そこから本人の意思が抜け落ち、労働はただの「耐える時間」に変わります。この閉塞感を打破するには、外部からの評価や収入に依存しない個人的な興味や、スキルの学び直し(リスキリング)など、自分自身の納得感を基準にした「働き方」の再構築が求められています。

 

[参考資料]

パーソルキャリア株式会社/Job総研『2024年 転職条件の実態調査』