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200万円の境界線…制度と生活実感の差
厚生労働省の資料(「後期高齢者医療制度について」)によれば、75歳以上の単身世帯の場合、「住民税課税所得28万円以上」かつ「年金収入とその他所得の合計が200万円以上」であれば、医療費の窓口負担は2割に引き上げられます。
2026年現在、団塊の世代がすべて後期高齢者に達したことで、制度維持のための「負担の適正化」はさらに加速しており、かつての「1割負担」という安心感は過去のものとなりつつあります。
しかし、この「200万円」という線引きには、現代の経済実態が反映されていません。総務省統計局『家計調査 家計収支編 2025年平均』によれば、高齢単身無職世帯の平均的な消費支出は月15万5,782円。山岡さんのように年200万円(月約16.6万円)の収入がある層は、統計上は「黒字」に見えます。
ところが、ここから社会保険料、所得税、住民税が引かれ、さらに昨今の2%を超える物価上昇(2026年度年金額改定の指標となる物価変動率は3.2%に達しています)を考慮すれば、手元に残る金額は決して「余裕」を意味しません。
厚生労働省『令和6年国民生活基礎調査』によると、高齢者世帯の55.8%が「生活が苦しい」と回答しており、その主要因が「年金額の伸びが物価高に追いついていないこと」や「社会保険料の負担増」であることは明らかです。
制度は、公平性を保つために明確な数字で線を引く必要があります。しかし、その線の「すぐ外側」にいる山岡さんのような層にとって、数万円の収入増がそれ以上の負担増を招く「逆転現象」は、勤労意欲を削ぐだけでなく、暮らしそのものへの不安を増幅させています。