奨学金を借りる際、「親に頼めるか、頼めないか」で、受け取れる金額に格差が生まれることをご存じだろうか。人的保証(親族)を用意できない学生は、機関保証を選ばざるを得ず、毎月の振込額から保証料が天引きされる。最も支援が必要な困窮学生の財布から、資金が抜かれていく矛盾――。本記事では、アクティブアンドカンパニー代表の大野順也氏が、Aさんの事例とともに、「誰にも頼れない」ことが経済的ハンデになってしまう、制度の構造的欠陥について解説する。
農業高校時代、勉強についていけず欠席がちに。不登校を救ってくれた恩師の助言で、北海道の女子高生が17歳で背負った「借金500万円」…大学進学後、ATMで立ちすくんだ「残高1,500円」の恐怖 (※写真はイメージです/PIXTA)

奨学金の「保証制度」が抱える構造的課題

Aさんの事例で注目すべき点は、奨学金を借りる際に選択する「保証制度」の問題である。現在、JASSOの奨学金には、主に「人的保証」と「機関保証」の2つの選択肢が存在する。奨学金制度に馴染みのない人のために、それぞれの仕組みとメリット・デメリットについて整理していく。

 

まず「人的保証」は、親族などが連帯保証人・保証人となる形式だ。

 

・メリット:保証料を支払う必要がないため、貸与された金額が全額手元に入る。

・デメリット:万が一返済が滞った場合、連帯保証人である親族が法的返還義務を負う。

 

親族の高齢化や経済状況によっては、連鎖的に生活が破綻するリスクを孕んでいる。

 

一方で、Aさんのように家庭の事情で親族を頼れない学生が選択するのが「機関保証」だ。これは、一定の保証料を支払うことで、保証機関が保証人となる仕組みである。

 

・メリット:親族の経済状況に関わらず、学生自身の責任で奨学金を借り、進学の機会を得られる。

・デメリット:毎月の貸与額から「保証料」が天引きされるため、学生が実際に受け取れる額が減少する。

 

Aさんのケースでは、月額12万円の貸与に対し、約1万円近い保証料が差し引かれていた。4年間で支払う保証料の総額は数十万円におよび、これが学生の生活をさらに圧迫する要因となっている。親を頼れず、経済的に最も困窮している学生ほど、多額の保証料という「追加コスト」を支払わなければ学べないという逆転現象が起きているのだ。

 

奨学金の返済負担は、もはや学生個人の「自己責任」で済ませるべきレベルを超えている。Aさんのような若者が、金銭的な不安に怯えることなく、生徒たちの教育に専念できる環境を整えること。それこそが、将来の日本への最大の投資になるのではないだろうか。

 

 

大野 順也

アクティブアンドカンパニー 代表取締役社長

奨学金バンク創設者