相続対策としての資産管理や契約において「感情」ばかりに振り回されると、トラブルに陥ることも少なくありません。しかし、終活においては、その「感情」こそが最大の決定要因になります。人は時として、合理的な利益よりも、一時の激情や過去のわだかまりを優先して行動してしまうこともあるからです。本記事では、西川満則氏、福村雄一氏、大城京子氏、小島秀樹氏共著の書籍『終活の落とし穴』(日本経済新聞出版)より、終活における不確定要素である「感情の落とし穴」にはまらないための心構えを2つの事例から紐解いていきます。
「俺は娘に愛されて幸せだ」…酒と女と博打で家庭を顧みなかった末期がんの80代父を完璧な演技で騙し、“嘘の愛”で看取った〈娘の復讐〉の衝撃結末 (※写真はイメージです/PIXTA)

酒と女と博打で家族を捨てた80代父を“嘘の愛”で看取った娘

場面1

男性:「俺はがんで最期が近いのは分かっている。本当だったら一人で死ななきゃならない。父親としては、家族を捨てたような生き方をしてきたから。……だけど、娘は、こんな俺を愛してくれる。だから、俺は幸せだ。だから、俺は、ここで、痛みだけ取ってもらって、死ねればいい。家なんて、ない。でも、娘が居てくれる」

 

場面2

娘:「私は、父親に復讐したい。父は私たち家族を捨てた。だから、噓の愛情でだまして、娘に愛されたと誤解させて、最期を迎えさせたい」

 

場面3

看取りの後、天国に旅立った男性の表情は穏やかだった。また、娘の涙に、復讐の気持ちは微塵も感じられなかった。

 

娘:「私は、復讐を終えました」

 

涙は「達成感」か、それとも「和解」か…

皆さんは、どのように感じられたでしょうか。終活の中で、男性は自分の人生を振り返り、自分は家で最期を迎える資格などないと述べ、自宅での最期は希望しませんでした。そして、娘と心の和解をし、病院で痛みだけ取って、最期を迎えることを選択しました。

 

結果として、男性の思いは遂げられ、その終活は完結するわけですが、そこには、娘の憎しみが入り混じっていました。当初は真の和解ではなかったのかもしれませんが、その感情は徐々に変化をしていったのでした。