老後の住まいとして老人ホームを検討する際、多くの方が「手厚い介護」や「充実した設備」に目を向けます。十分な資産を築き、万全の準備を整えて新生活をスタートさせたとしても、数年後に予期せぬ事態に見舞われるケースは少なくありません。ある夫婦のケースをみていきます。
ふざけるな!〈年金月28万円・貯金7,000万円の70代夫婦〉社宅生活30年、満を持して「高級老人ホーム」に入居も、5年後に知った「契約書の落とし穴」 (※写真はイメージです/PIXTA)

有料老人ホームの「返還金制度」と契約の盲点

株式会社LIFULL senior/LIFULL 介護がエリア別の有料老人ホームの費用相場を調査したところ、東京都の有料老人ホーム入居時費用相場は1,008万円。神奈川県720万円、千葉県470万円、埼玉県320万円と比べて、東京都のホームは一段も二段も高い費用水準でした。

 

そもそも、わかりにくい老人ホームの費用。多くの民間施設は、入居時に支払う一時金を一定期間かけて費用化していく「償却」という仕組みをとっています。

 

■初期償却(非返還対象)
入居した瞬間に、受領額の10%〜25%程度が施設側の収益として確定し、返還対象から外れるもの。

■償却期間
残りの金額を、あらかじめ定められた期間(一般的に5年〜15年)で均等に案分していく期間。

 

国民生活センターに寄せられる高齢者ホーム関連の相談の中でも、「解約時の返還金が想定より少なかった」というトラブルは恒常的に発生しています。

 

特に佐藤さんのように5年程度経過していると、契約上の償却が進み、数百万円単位の初期償却分も含めて「戻ってこないお金」が大半を占めることになります。また、近年の人件費や光熱費の高騰を受け、施設側が利用規約に基づき管理費を改定する動きも加速しています。

 

多くの人が終の棲家として考える老人ホーム。入居時のサービス内容だけでなく、「退去せざるを得なくなったときの条件」をしっかりと押さえておきたいものです。

 

■償却スケジュールの書面確認

毎年、どの程度の金額が手元に残るのかを一覧で把握しておく。

■管理費改定の基準

「経済情勢の変化」という曖昧な表現ではなく、どのような指標に基づき値上げが行われるのかを確認する。

■運営会社の変更リスク

経営主体が変わった際のサービス維持義務について、重要事項説明書でチェックする。

 

入居後の万一の際に後悔しないよう、契約時に細かな数字と条項を確認する姿勢が求められます。