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統計から紐解く、近すぎるがゆえの「冷えた関係」
国立社会保障・人口問題研究所が実施した『第7回全国家庭動向調査(2023年公表)』によれば、親世代との同別居状況において「同居」を選択する割合は年々減少していますが、注目すべきはその中身です。
同調査では、親との居住距離別に「親との接触頻度」を分析しています。ここでは「父親と同居している既婚女性」のデータを見てみると、「毎日父親と会話をしている」のは81.8%でした。
つまり、物理的に同じ住居に暮らしていても、約2割は毎日会話をしていないことになります。日常的な交流の度合いには、大きな幅があることがわかります。
【父親と既婚の娘:同別居別、会話の頻度】
毎日…同居81.8%、近居13.0%、遠居4.8%
週に3~4回…同居9.1%、近居16.4%、遠居3.6%
週に1~2回…同居6.5%、近居24.7%、遠居14.8%
月に1~2回…同居1.3%、近居32.2%、遠居33.3%
年に数回…近居8.7%、遠居32.4%
ほとんどしない…同居1.3%、近居5.0%、遠居11.1%
会話が多いほど良好な関係であるとは限りませんが、同居が必ずしも精神的な充足を生むとは限らないことが推察されます。物理的に離れて住んでいるケースのほうが、たまに会うからこそ会話が弾み、心理的な距離が近く保たれているという逆転現象が起こることも考えられるでしょう。
同居は、生活習慣の違いやプライバシーの確保など、お互いに「余計な気遣い」を強いる環境でもあります。物理的な距離の近さが、かえって心の壁を厚くしている現状が、同調査の結果からも垣間見ることができます。
老後の安心といえば、まずは年金額や貯蓄額に目が行きがちです。しかし、加藤さんの事例が示すのは、いくら貯蓄があろうとも、家庭内に「自分が必要とされている、あるいは自然体でいられる」という手応えがなければ、真の幸福感は得られないという現実です。
家族において、一人の人間としてどう居場所を再構築していくか。同居という形式にこだわらず、お互いが「気を遣わずに済む」適切な距離感を模索することは、これからの長寿社会における、お金以上に切実な課題といえるかもしれません。